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相場上昇時に利益確定するのはもったいない?

相場上昇時に利益確定するのはもったいない?

資産運用を続けていると、「最高値を更新」といった株価の上昇を伝えるニュースを目にすることがあります。そのような相場上昇時には、お客様から「今が出金のタイミングでしょうか」というご質問をいただくことがあります。

ご質問の背景には、「そろそろ相場が下がるのではないか」「今のうちに利益を確保したい」という考えがあるのだと推察されます。そのように考えるのはごく自然なことですし、資産運用に真剣に取り組んでいるからこそ、出金のタイミングを見極めようとしているのだと思います。

一方で、将来のためにリターンを増やすことを考えた場合には、次のことも意識していただきたいと思います。それは、仮に出金して利益が出たとしても、その後に価格が上がり続けるなど、出金せずに運用し続けたほうがもっと利益を得られる可能性があるという点です。

利益確定をすると値上がり益を取り逃がす可能性もある

仮に利益確定で出金したあとに値上がりが続いた場合、運用を続けていれば得られた利益を取り逃がすことになってしまいます。「続けていればもっと利益を得られたのに」と後悔することになるのは、非常にもったいないことです。

具体例を挙げてみます。次のグラフは直近5年間(2020年7月末~2025年7月末)の米国株の値動きです。

米国株の値動き(2020年7月末~2025年7月末)(※1)

米国株の値動き(2020年7月末~2025年7月末)(※1)

※米国株の値動きはS&P500種株価指数の推移。

2020年のコロナ・ショックのあと、株価はしばらく上昇が続きました。しかし、2022年に入ると、ウクライナ情勢の緊迫化や金融政策の見直しなどにより下落に転じました。それから約2年後の2024年1月に、株価は下落前の水準を回復しました。

2024年1月に、米国株が約2年ぶりに最高値を更新したというニュースを見て「ここでいったん利益確定をしておこう」と資産を売却したとします。米国株に投資した方の多くに利益が出ており、利益確定の良いタイミングに思えます。

しかし、この後も相場の上昇が続いたため、利益確定をしたことで値上がり益を取り逃がすことになってしまいました。

利益確定後に相場の上昇が続くと値上がり益を取り逃がしてしまう

米国株の値動き(2023年7月末~2025年7月末)(※1)

利益確定後に相場の上昇が続くと値上がり益を取り逃がしてしまう

※米国株の値動きはS&P500種株価指数の推移。

利益確定をすると再投資のタイミングも難しい

利益確定をしたあとに相場が上昇してしまった場合、心理的に再投資が難しいのは想像しやすいと思います。割高になった価格で買い戻すことに抵抗を感じるのは自然な心理だからです。相場が下がるのを待ち続けた結果、ずっと再投資できないというのもよくある話です。

一方で、利益確定をしたあと、予想通り相場が下落した場合はどうでしょうか。

今度は、直近2年間(2023年7月末~2025年7月末)の米国株の値動きを見てみます。株価は2025年2月まで値上がりが続きました。その後、米国のトランプ大統領による関税政策をめぐる混乱から4月上旬に株価は急落しましたが、6月には再び下落前の水準を回復しました。もし2月に米国株を売り、4月上旬の急落時に買い戻すことができていれば、淡々と運用し続けていた場合よりもリターンを大きくできたことになります。

しかし、相場の下落時にはさらなる相場下落への不安がつきまとうものです。4月の相場急落時に、「いま入金したら、もっと下がって損をするのではないか」と感じた方は多かったのではないでしょうか。運用中の資産があった場合には、さらなる資産の目減りを防ごうとむしろ出金を検討された方もいたかもしれません。

予想通り相場が下落しても、再投資のタイミングを逃してしまうこともある

米国株の値動き(2023年7月末~2025年7月末の2年間を拡大)(※1)

予想通り相場が下落しても、再投資のタイミングを逃してしまうこともある

※米国株の値動きはS&P500種株価指数の推移。

相場が下落したときにタイミングを逃さず再投資することもまた、心理的になかなか難しいものです。

相場にあわせて行動するのではなく、淡々と続けることが大切

「長期・積立・分散」の資産運用では、短期的な相場の動きを気にし過ぎる必要はありません。短期的な価格の上げ下げからリターンを得るのではなく、そうした価格変動を乗り越えて、投資した資産が本質的に生み出すリターンを得ようとするのが長期投資です。

長期投資では相場にあわせて売買する必要はない

短期投資と長期投資で狙うリターンのイメージ図

長期投資では相場にあわせて売買する必要はない

「長期・積立・分散」の資産運用は、世界経済全体に投資しているようなものであり、10年、20年と運用を続けることで、世界経済が生み出す長期的なリターンを狙うことができます。

この先も淡々と運用を続け、長い目で資産の成長を目指しましょう。

※1 グラフはBloombergのデータに基づきウェルスナビ作成。

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