「資産運用を始めたけど、確定申告は必要なのだろうか」と疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、資産運用の確定申告は原則不要ですが、例外もあります。
この記事では、資産運用で確定申告が必要になるケース、不要なケース、不要でもした方が良いケースに分けて、それぞれ具体的に紹介します。自分の場合はどのケースに該当するのか確認してみましょう。
※本記事は2024年12月時点の制度・情報を基に、個人(居住者)の所得についての税制を説明したものです。
資産運用をすると確定申告をする必要性が生じるのか?
確定申告とは、1年間に発生した所得とそれにかかる税金の金額をそれぞれ計算して確定させ、税務署に申告する手続きのことです。
資産運用を通じて利益を得たとしても必ず確定申告が必要になる、というわけではありません。
例えばNISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇制度を利用している場合や、源泉徴収ありの特定口座で運用している場合などは、利益が出ても確定申告がいらないケースが一般的です。しかし例外もあります。
確定申告が不要なケース、必要なケース、不要でも確定申告をした方がメリットがあるケース、3種類に分けてそれぞれ見ていきましょう。
資産運用で確定申告が不要なケース
資産運用の結果利益がでたとしても、確定申告が不要な場合があります。
【確定申告が不要な主なケース】
・NISAで資産運用している場合
・iDeCo(個人型確定拠出年金)で資産運用している人で、年末調整で所得控除を受ける場合
・源泉徴収ありの特定口座で運用している場合
以下、それぞれのケースの詳細や、確定申告が不要な理由について解説します。
NISAで資産運用している場合
NISA口座で運用している資産は、いくら利益が出ても税金がかかりません。税金がかからないので、確定申告も不要というわけです。
ただ、2023年以前にNISAを利用していた人は少し注意が必要です。
2023年以前のNISAには非課税期間(5年もしくは20年)があり、期間が終了すると自動的に資産が課税口座(税金がかかる口座)に移動する仕組みになっています。後述するように課税口座には3種類ありますが、移動先の口座が「源泉徴収ありの特定口座」でない場合は確定申告が必要になります。
iDeCoで資産運用している人で、年末調整で所得控除を受ける場合
前述のNISA同様、iDeCoも利益が非課税なので、確定申告の必要がありません。
iDeCoの掛け金はその全額が所得控除の対象です。個人事業主などの場合は、所得控除を受けるために確定申告が必要ですが、会社員や公務員などであれば、勤務先の年末調整によって所得控除を受けられるため、確定申告は必要ありません。
なお、勤務先で年末調整を受けられる場合でも、医療費控除やふるさと納税など他の控除を受けるために確定申告が必要な人は、年末調整でなく確定申告でiDeCo分も合わせて手続きして還付を受けることも可能です。
源泉徴収ありの特定口座で運用している場合
NISAやiDeCo以外で株や投資信託を購入している人もいるでしょう。その場合は「源泉徴収ありの特定口座」で取引している分に関しては、確定申告が不要です。
証券会社の口座には「源泉徴収ありの特定口座」「源泉徴収なしの特定口座」「一般口座」の3種類があり、どの口座で取引したかによって確定申告が必要かどうかが変わります。
自分の口座の種類が分からない場合は、銀行や証券会社から送られてきた書類や口座開設者向けの個人ページ(マイページ)などを確認して、正確に把握しておきましょう。
資産運用で確定申告が必要なケース
続いて、資産運用で確定申告が必要になるケースを見ていきましょう。
【確定申告が必要な主なケース】
・資産運用などで年間20万円を超える利益を得た場合
・一般口座や源泉徴収なしの特定口座で運用益が出た場合
以下、それぞれ解説します。
資産運用などで年間20万円を超える利益を得た場合
外貨預金の為替差益や、暗号資産、副業など、給与所得以外で得た所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。利益が20万円以下なら確定申告は不要ですが、その場合でも住民税の申告は別途必要なので注意しましょう。なお、確定申告をすれば自動的に住民税の申告をしたことになるため、確定申告をする場合は別途住民税の申告をする必要はありません。
ただし、そもそも税金がかからないNISA口座や、源泉徴収ありの特定口座での取引は除きます。
また、日本国内の金融機関で外貨預金を保有している場合も、保有期間中は確定申告をする必要はありません。運用期間中に発生する利息には約20%の税金がかかりますが、円預金の利息と同様に源泉分離課税されるためです。ただし、国外の金融機関で運用している場合など、源泉分離課税の対象外で、運用期間中でも確定申告が必要となるケースもあるため注意が必要です。
FXなど為替取引の利益にも、外貨預金と同様に約20%の税金がかかりますが、申告分離課税の対象である先物取引にかかる雑所得等に当たり、確定申告が必要な点が異なります。
暗号資産の利益は総合課税の対象の雑所得に当たるため、給与所得など他の所得と合算した所得金額に応じて5~45%の所得税と10%の住民税を確定申告によって納める必要があります。暗号資産と同じ雑所得に該当する利益には、外貨預金の為替差益などがあります。前述の通り運用中の外貨預金に生じる利息は確定申告不要ですが、運用を終了し利益が確定したら確定申告が必要となる点に注意が必要です。
一般口座や源泉徴収なしの特定口座で運用益が出た場合
前述の通り、NISA口座や源泉徴収ありの特定口座で運用益が出た場合は確定申告不要です。しかし、それ以外の口座(源泉徴収なしの特定口座や一般口座)で運用益が出た場合は注意が必要です。
一般口座は自分で利益や税額の計算を行う口座で、未公開株の取引など特定口座ではできない取引も行えるのが特徴です。一方で、源泉徴収なしの特定口座は、利益や税額の計算は証券会社が行いますが、申告と納税は自分で行う口座です。
両方とも、売却益が少ない場合などには申告不要になります。
資産運用などで得た利益が年間20万円以下でも確定申告が必要なケース
上記のケース以外にも、確定申告が必要になる場合があるので確認しておきましょう。以下のいずれかを満たす人は、資産運用で得た利益が年間20万円以下でも確定申告が必要です。
・給与所得が2,000万円超
・2ヶ所以上から給与をもらい、年末調整されていない所得が20万円超
(参考:国税庁「確定申告が必要な方」)
上記の条件にあてはまる場合は、確定申告の際、資産運用に関連する項目の記入を忘れないよう気を付けましょう。
資産運用で確定申告をした方が良いケース

確定申告が必須ではないものの、確定申告をすると税金が戻ってくるなどの恩恵を受けられる人もいます。例えば次のようなケースが該当します。
【確定申告不要でも、した方が良いケース】
・複数の金融機関で損益通算をしたい場合
・利益よりも損失が多く繰越控除が可能な場合
・配当控除を受けられる場合
・外国税額控除を受けられる場合
以下、それぞれ解説します。
複数の金融機関で損益通算をしたい場合
複数の金融機関の課税口座で資産運用をしていて「損益通算」をしたい場合は確定申告をするメリットがあります。
例えばA銀行で利益が出て、B証券で損失が出ていた場合、両者を合算して税額を計算することを損益通算といいます。損益通算すると利益が圧縮されるため、納めるべき税額が少なくなります。
複数の口座がある場合、自動的に損益通算されることはないので確定申告が必要です。なお、NISA口座は制度上、損益通算ができません。
利益よりも損失が多く繰越控除が可能な場合
資産運用の利益より損失が多くなってしまった場合、その翌年以後3年間にわたって損失分を繰り越すことができます。これを繰越控除といいます。
繰り越している期間中に利益が出ても、過去の損失と相殺できるため税額を抑えられます。前述の損益通算を行っても差し引ききれないような損失が出た際にも役立ちます。
繰越控除を受けるには確定申告が必要です。ただし、NISA口座での損失は繰越控除ができません。
配当控除を受けられる場合
配当控除を受けたい場合も、確定申告が必要です。配当控除とは、株の配当金や証券投資信託の分配金などを受け取った場合に一定の税額控除を受けられる仕組みのことです。申告分離課税ではなく総合課税となっている配当所得がある人が対象です。
申告分離課税か総合課税かは、自分で選ぶことができます。それぞれ税金の計算方法が異なり、どちらが合っているかは人によって違うため、慎重に検討したいところです。
なお、NISAで配当金が非課税となる受け取り方式(株式数比例配分方式)を選択している場合は配当控除の対象になりません。
外国税額控除を受けられる場合
前述の配当控除は、外国法人から受け取る配当は対象外です。しかし、外国株式や外国のETF(上場投資信託)に投資していて配当金や分配金を受け取った場合は「外国税額控除」を受けられます。
外国税額控除を受けることで、外国でも課税され日本でも課税される「二重課税」状態の負担をやわらげることができます。この控除を受けたい場合も確定申告が必要です。
なお、NISA口座で投資している分に関してはそもそも非課税で二重課税にならないため、外国税額控除の対象外です。
資産運用の確定申告に関するよくある質問

最後に、資産運用(特にNISA)の確定申告でよくある質問に回答します。
NISAで利益が出た場合、扶養控除や配偶者控除に影響はありますか?
NISAで利益が出て収入が上がると、扶養から外れて税額が上がってしまうのではないかと心配になる人もいるでしょう。
しかし、NISA口座での取引は非課税であり確定申告の必要がないため、そこで得た利益は、扶養控除や配偶者控除の算定根拠となる「合計所得金額」に含まれません。
つまり、NISAでいくら利益を得たとしても、それが原因で税制上の扶養から外れることはないということです。
NISAでも税金がかかるケースがあるというのは本当ですか?
NISAは運用益が非課税になる制度ですが、配当金の受け取り方によっては、受け取った配当金に税金がかかる場合があります。
配当金の受け取り方法を「配当金領収証方式」や「登録配当金受領口座方式」などにしていた場合は税金がかかり、「株式数比例配分方式」や配当金を受け取らずに再投資に回す場合には税金がかかりません。
NISAの配当金にかかる税金は源泉徴収されるため、確定申告は不要です。ただし、配当控除や損益通算・繰越控除の適用を希望する場合は確定申告を行いましょう。
確定申告が必要なケースを理解しておこう

NISA、iDeCo、源泉徴収ありの特定口座を使って資産運用している場合には、原則として確定申告は必要ありません。
ただし、中には確定申告が必要になるケースや、確定申告しなくてもいいけれど、した方が得になるケースもあるので、制度をよく確認し、必要に応じて税務の専門家に相談しましょう。
「資産運用をするにあたって税金のことを考えるのは煩わしい」
「運用するなら確定申告がいらない方法がいい」
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