最近、ニュースで耳にする「金利上昇」は、預金や住宅ローンなど、私たちの資産形成に大きく関わっています。この記事では、金利の基本的な仕組み、物価上昇との関係を分かりやすく解説。物価上昇に負けない資産づくりのヒントをお伝えします。
この記事でわかること
- 長らく続いた超低金利(ゼロ金利・マイナス金利)時代を経て、近年は物価上昇に伴う段階的な利上げが行われている
- 金利の上昇により銀行預金で受け取れる利息が増えるというメリットがある一方、住宅ローンなどの借入において金利負担(返済負担)が増える可能性がある
- 生活費以外の長期的な備えについては預金だけに頼らず、「長期・積立・分散」による資産運用を組み合わせることが重要
目次
1. 最近よく聞く「金利上昇」って、結局どういうこと?
最近、「日本銀行(日銀)が利上げを決定」「住宅ローン金利が引き上げられた」といったニュースが、すっかり日常の風景になりました。長らく0.001%にはりついていたメガバンクの普通預金金利も、0.3%〜0.4%水準まで引き上げられるなど、私たちの身近な口座でも「金利のある世界」への変化が起きています。
預金金利が上がれば、銀行に預けたお金の利息が増えるといったメリットがある反面、注意しておきたい側面もあります。
そもそも、なぜ今、金利が上がっているのか。金利の基本的な仕組みから、私たちの生活や資産運用への影響までを分かりやすく解説します。
2.金利とは?基本的な仕組み
金利とは、お金を借りる際に発生する「レンタル料の割合(レート)」のことです。
利子・利息の基本
金利に基づいて、実際にやり取りされるお金そのものを「利子」や「利息」と呼びます。金融機関や法律用語等で使い分けられる場合がありますが、基本的には同じ意味です。
金利の計算方法
金利の計算方法は、大きく分けて「単利(たんり)」と「複利(ふくり)」の2種類があります。お金を借りる場合も貸す場合も、どちらの計算方法が使われているかで最終的な金額が大きく変わります。
単利と複利の違い
- 単利:当初の元本に対してのみ利息が発生する仕組み
- 複利:受け取った利息を元本に組み入れ、その合計額(元本+利息)に対してさらに利息が発生する仕組み
複利では、元本だけでなく利息にも利息が発生するため、運用期間が長くなるほど最終的な金額は大きくなります。そのため、長期的な資産形成においては、複利の効果が重要な役割を果たします。

名目金利と実質金利
金利を考える上で、もうひとつ大切な視点があります。それは、物価の変動を加味することです。 銀行の預金金利などは「名目金利」と呼ばれますが、物価が上昇すると、それに応じてお金の価値は下落してしまいます。
そこで使われるのが、「実質金利」という考え方です。実質金利は、以下の数式で計算します。
実質金利=名目金利 − 物価上昇率
例えば、預金金利が0.4%(名目金利)であっても、物価が3%上昇した場合、実質金利はマイナス2.6%です。この場合、預金残高は増えていても、実質的な購買力(お金の価値)は下がっていることになります。
3. 短期金利と長期金利の違い
「金利は銀行が自由に決めている」「日銀がすべて決めている」と思われがちですが、実際には金利の種類によって異なります。
金利は大きく分けて「短期金利」と「長期金利」の2つがあり、短期金利は日銀の政策の影響を強く受け、長期金利は市場参加者の予想や取引によって決まります。
変動金利のベース「短期金利」
短期金利とは、一般的に1年未満の資金の貸し借りに適用される金利のことです。
短期金利は、日銀が決定する政策金利の影響を強く受けます。そのため、日銀が利上げを行うと短期金利も上昇しやすくなり、企業や個人の借入コストに影響を与えます。
- 短期金利の影響を受けやすいもの:普通預金金利、住宅ローンの変動金利、企業の短期借入金利
固定金利のベース「長期金利」
長期金利とは、一般的に1年以上の資金の貸し借りに適用される金利水準を指します。代表的な指標として、「新発10年物国債の利回り」があります。
長期金利は日銀が直接決定するものではなく、将来の景気や物価の見通し、海外金利の動向などを反映して市場(債券市場)で決まります。
- 長期金利の影響を受けやすいもの: 定期預金金利、住宅ローンの固定金利、企業向け長期融資の金利

4. 日本の金利はどう変わってきた?
日本の金利は、時代とともに大きく変化してきました。
預金だけで増える時代からゼロ金利へ
1980年代後半から1990年代初頭のバブル期には、定期預金の金利が5〜6%を超えることも珍しくありませんでした。当時は、価格変動リスクを負わずとも、銀行にお金を預けているだけで資産を増やしやすい時代でした。
しかし、バブル崩壊後は景気低迷が長く続きました。企業の投資や個人消費が伸び悩み、物価も上がりにくい「デフレ」の時代に入ります。
そこで日銀は、企業や個人がお金を借りやすくするために政策金利を引き下げ続けました。その結果、「ゼロ金利政策」や「マイナス金利政策」が導入され、預金にほとんど利息がつかない時代が四半世紀近く続きます。
本格的な「金利のある世界」の定着へ
長く続いた超低金利時代ですが、近年は物価上昇が進んでいます。こうした状況を受け、日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除しました。
その後も段階的な利上げが行われ、2026年現在、政策金利は1%水準まで引き上げられています。これに伴い、メガバンクの普通預金金利が0.4%に達するなど、日本は本格的に「金利のある世界」へ戻り、それが定着しつつあります。

5. 金利上昇が私たちの生活に与える影響
金利の上昇は、預金やローンだけでなく、物価や景気にも影響を与えます。そのため、私たちの家計や日常生活にもさまざまな変化が生じます。
預金で受け取れる利息が増える
金利が上昇すると、銀行の預金金利も上がる傾向があります。普通預金や定期預金に預けているお金から受け取れる利息が増え、貯蓄をしている人にとってはメリットとなります。
ローンの返済負担が増える可能性がある
金利上昇はお金を借りている人にとって負担増につながる場合があります。住宅ローン(特に変動金利)や自動車ローン、教育ローンなどの金利が上昇すると、毎月の返済額や総返済額が増える可能性があります。
モノやサービスの値上がりを抑える効果が期待できる
一般的に、金利が上昇すると企業や個人はお金を借りにくくなり、消費や投資が落ち着く傾向にあります。その結果、景気の過熱が抑えられ、食品や日用品などの価格上昇を和らげる効果が期待できます。
為替を通じて生活費に影響することがある
金利は為替相場にも影響を与えます。一般的には、日本の金利が上がって海外との金利差が縮まると、円高が進みやすくなり、輸入品や海外から仕入れる原材料の価格が下がります。その結果、ガソリンや食料品などの価格上昇が抑えられる場合があります。
金利の上昇は「預金では有利になる一方、借入では負担が増える」という側面を持っています。また、物価や為替を通じて私たちの生活にも幅広い影響を与えるため、金利の動向は家計管理においても重要なポイントとなります。
6. 金利があっても、預金だけでは不十分?
日本は再び「金利のある世界」に入りました。預金金利の引き上げによって、口座の数字が増える楽しさが戻ってきたことは嬉しい変化ですが、それだけで安心するのは禁物です。ここで重要になるのが、先ほどお伝えした「実質金利」の視点です。
今後も物価上昇率が預金金利を上回る状況が続けば、いくら預金残高が増えていても、実質的なお金の価値(購買力)は目減りし続けてしまうからです。
もちろん、生活費や近い将来使う予定の資金は、すぐに引き出せる預金など安全性の高い方法で確保しておくことが鉄則です。
一方で、老後資金など長期的に準備するお金については、物価上昇が続く時代だからこそ、預金だけに頼ることはリスクになり得ます。大切な資産を守り、育てていくためには、NISAなどを活用した「長期・積立・分散」による資産運用を賢く組み合わせていきましょう。



監修者:小松原 和仁
大手金融機関(証券・保険・信託銀行)にて、個人向けのウェルスマネジメント業務に従事。「働く世代に豊かさを」というミッションに共感し2018年にウェルスナビに参画。これまでに1,000回以上のセミナー講師を務める。
主な資格
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・宅地建物取引士

