教育資金を準備する方法として従来よく利用されてきたのが「学資保険」です。しかし近年販売されている学資保険は全般的に利回りが低いため、別の方法で教育資金を準備したいと考える人もいるでしょう。
学資保険に代わって注目されているのが「NISA」という選択肢です。
この記事では、NISAは学資保険の代わりになるのか、NISAを教育資金の準備に使うメリット・デメリットと併せて詳しく解説します。
NISAは学資保険代わりとして活用できる

NISAは学資保険と同じように、教育資金の準備のためにコツコツと長期にわたって積み立てていくことができます。
なぜNISAが教育資金の準備に適しているといえるのか、詳しく見ていきましょう。
NISAが教育資金の準備に適している4つの理由
NISAが教育資金を準備するのに向いている理由は、次の4つです。
・効率的な資産運用が可能だから
・長期の運用が可能だから
・物価上昇リスクに備えることができるから
・手軽に積み立て運用ができるから
以下、それぞれ解説します。
効率的な資産運用が可能だから
NISAは運用益が非課税になる制度です。通常、株や投資信託で得た投資の利益には約20%の税金がかかりますが、NISAでは運用益に対して税金がかからないため、効率的に資産運用をすることが可能です。
また、NISAのつみたて投資枠で選択できる銘柄は、手数料が安いものが多いのも特長です。
手数料が高いと、運用効率が悪くなってしまいます。NISAを活用して、効率的に資産運用を行うことがおすすめです。
長期の運用が可能だから
学費の負担が最も重くなるのは、一般的には大学進学時です。お金が必要な時期が概ね決まっていて、10年以上の長期投資が可能な場合、長期で資産運用することによる「複利的な効果」を享受しやすいでしょう。
複利的な効果とは、資産運用で得た利益が新たな利益を生み、どんどんお金が増えやすくなっていくことを指します。運用期間が長ければ長いほど、複利的な効果は増していきます。
NISAには運用期間の制限がなく、非課税のまま長期で運用できるため、よりリスクを抑えやすくリターンを得やすくなります。
物価上昇リスクに備えることができるから
近年、さまざまな物の価格が上がる中、教育費も値上がり傾向にあります。物価上昇が起きると、同じ金額でも買えるものが少なくなるなど、実質的に資産が目減りすることになります。
預貯金や保険は、お金が増える速度が遅く物価上昇に追いつかないことが多いため、物価上昇に弱い資産といわれています。
一方、NISAなどの資産運用商品(特に株式系のもの)は、物価上昇が起きた時には株価が上昇し、資産の価値が高まる傾向があるため、物価上昇に強いといわれています。
教育資金の準備にNISAを活用することで、資産全体が物価上昇に弱いものばかりに偏るのを防ぎ、物価上昇リスクに備えることが出来ます。
手軽に積み立て運用ができるから
NISAを利用すると、最初に銘柄(運用する商品)と金額を決めるだけで、あとは毎月一定額の運用を半自動的に継続できます。
毎回資金移動をしたり売買のタイミングを図ったりする必要がないため、忙しい人でも利用しやすいでしょう。「貯蓄が苦手」という理由で学資保険を検討している人にもおすすめです。
「つみたて投資枠(旧つみたてNISA)」では、年間120万円(総額1,800万円)まで積み立て可能なため、教育資金としては十分な金額を積み立てられるでしょう。
また、もう1つの枠「成長投資枠(旧一般NISA)」でも積立投資が可能です。成長投資枠の年間投資額の上限は年間240万円までのため、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用すると、年間で最大360万円まで積み立てることができます。両者では、選択できる商品が異なるため、ニーズに合わせてどちらを利用するかを選ぶと良いでしょう。
学資保険とNISAの違い

NISAと異なる学資保険の特徴は次の通りです。
・学資保険には万が一の保障がある
・学資保険は契約時に保険料や保険金が決まる商品が多い
・学資保険の保険金には税金がかかる
・学資保険の保険料は生命保険料控除の対象
・学資保険は物価上昇に弱い
それぞれ解説します。
学資保険には万が一の保障がある
NISAとは違い、学資保険は「保険」なので死亡保障が付いています。
学資保険は、契約者である親が亡くなると、その後の保険料の払い込みが免除される仕組みになっています。もし万が一のことが起きても教育費の負担を軽減できるため、安心感があります。
ただし、返戻率を上げるために一括払いや短期払いを選択した場合、支払いが終わった後は「もしもの時の払い込み免除」というメリットはなくなってしまいます。
学資保険は契約時に保険料や保険金が決まる商品が多い
学資保険は契約時点で保険料や保険金の金額、受け取れる時期が決まっているものが一般的です。将来を見通しやすく計画を立てやすい点はメリットですが、臨機応変な対応が難しいという意味ではデメリットでもあります。
学資保険の保険金には税金がかかる
学資保険で受け取る保険金には、税金がかかります。
一般的には所得税と住民税、契約形態によっては贈与税もしくは相続税の課税対象です。保険料を支払う人と保険金を受け取る人の関係性や受け取り方(一括か分割か)などによって税金の種類や金額が変わってくるため、事前に確認しておくなど注意が必要です。
学資保険の保険料は生命保険料控除の対象
学資保険の保険料は生命保険料控除の対象です。つまり、支払った保険料に応じて税金(所得税や住民税)が安くなるということです。2012年以降に契約した学資保険なら、最大で4万円が所得控除の対象になります。
対して、NISAには所得控除の仕組みはありません。NISAの税制面でのメリットは、あくまで「運用益が非課税になる」という点だけです。
*2024年10月時点の税制・情報を基に記載しています。
学資保険は物価上昇に弱い
先述の通り、保険や預貯金は物価上昇に弱いという特徴があります。対して、NISAで選択できる「株式」や「株式を投資対象とする投資信託」「ETF(上場投資信託)」などは、比較的物価上昇に強い資産です。
過去を振り返ると、教育費は値上がりの傾向が見られます。30年ほど前(1990年時点)に比べ、大学の授業料+入学金の金額は25~35%上昇しているというデータもあります。
長期的な視点が必要となる教育資金準備においては、教育費が上昇していることを念頭に置いて、資産配分を考えておくことも重要といえます。
NISAを学資保険代わりにするメリット

NISAを学資保険の代わりに活用するメリットには、次のようなものがあります。
・より高い利回りが期待できる
・自由度が高い積み立て運用が可能
・学費を含む物価が高騰した場合に対応できる
・資産運用の知識と経験が得られる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
より高い利回りが期待できる
NISAは、学資保険よりも高い利回りが期待できます。
学資保険の利回りは、高いものでも年1%もないのが一般的です。しかし、NISAであれば適度なリスクを取ることで、年3~7%程度の利回りを期待する運用が出来ます。
仮に年5%で月3万円を15年間運用できれば、複利的な効果を勘案し、最終的には800万円超になります。実際に積み立てた金額は540万円、運用益が260万円超なので、50%近く増える計算です。
学資保険の返戻率(支払った保険料に対して受け取れる保険金の割合)は高くて110%程度なので、それと比べるとかなり大きな差があることが分かります。
なお、上記と同様の条件で年7%で運用できれば最終的には約950万円になり、年3%なら約680万円ですが、年1%だと約580万円にとどまります。
NISAのリターンはあくまで運用成果次第なので「NISAだから必ず学資保険より利回りが高い」とはいえません。ただ、長期間にわたって低コストで運用し続けることで、損失を回避し利益を大きくできる可能性が高まります。
自由度が高い積み立て運用が可能
学資保険は、積立期間、保険金の受取時期・受取金額が原則として契約時点で全て決まっています。
もし積立期間中に状況が変わって解約することになった場合、解約控除(解約の手数料のようなもの)を差し引かれた金額を受け取ることになるため、大きく元本割れする(損失が出る)可能性があります。
しかしNISAであれば、積み立てる金額も、現金化するタイミングも、その時々の状況に応じて自由に決められます。学資保険と違い、短期間で売却した場合でも、売却に伴う費用負担はほとんどありません。
今後、新たな子どもの誕生、転職、病気などさまざまな環境変化があったとしても、臨機応変に調整しやすいでしょう。
学費を含む物価が高騰した場合に対応できる
教育資金の準備期間は一般的に10~18年程度と長いため、その間に教育費を含む物価が大幅に上昇する可能性があります。
実際に、国立大学の授業料は過去30年ほどで35%増、私立は25%増となっています。

NISA(特に株式を投資対象とする投資信託などで運用している場合)は物価上昇が起きると資産価値が上昇する傾向があるため、物価上昇に強いとされています。また、前述の通り自由度が高いため、不測の事態にも対応しやすいでしょう。
一方、学資保険は現状、利回りが高いとされる学資保険でも年1%もないのが現状です。日本銀行が目標としている年2%の物価上昇が起こると、資産価値が実質的に目減りしてしまいます。
資産運用の知識と経験が得られる
NISAに取り組むと、自分で運用方針や銘柄を選んだり、相場の値動きを確認したりすることになります。
資産運用に関する一連の経験ができ、金融や経済などの知識も身に付くでしょう。そうして得た知識や経験は教養にもなり、仕事にも役立てられます。
副次的ではありますが、学資保険では得られないメリットといえます。
NISAを学資保険代わりにするデメリットと注意点

NISAを学資保険の代わりにすることはできますが、メリットばかりではありません。デメリットと注意点も併せて確認しておきましょう。
・NISAには価格変動リスクがある
・現金化するタイミングに注意が必要
それぞれ解説します。
NISAには価格変動リスクがある
運用にはリスクを伴います。NISAは資産を大きく増やせる可能性がある一方で、運用方法やタイミングなどによっては逆に減ってしまう可能性もあります。
「リスクとリターンは比例する」のが資産運用の原則です。学資保険は低リスク・低リターンといえますが、NISAはそれと比べると高リスク・高リターンになりやすいです。高いリターンを目指せば目指すほど、資産額が変動する幅が大きくなるため注意が必要です。
教育資金の準備に利用する際には、自身が許容できる範囲内にリスクを抑えた資産運用を心がけるなどの工夫をすると良いでしょう。
現金化するタイミングに注意が必要
NISAで教育資金を準備する際に特に注意したいのが、現金化のタイミングです。
NISAはいつでも自由に現金化できますが、現金化したいタイミングと相場の調子がいいタイミングが重なっているとは限りません。例えば、子どもが大学に進学する直前に「○○ショック」と名がつくような大不況が起きて、資産価値が大幅に下落してしまう可能性もあります。
目安として、大学進学まで2年を切ったら現金化を検討するなど、あまり直前までリスクを取り続けないよう気を付けましょう。
学資保険に向いている人・NISAに向いている人の特徴
学資保険にもNISAにも一長一短があり、どちらが優れているとは一概にはいえません。
そこで、メリット・デメリットを踏まえた上で、学資保険とNISAがそれぞれどんな人に向いているのか解説します。
学資保険は死亡保障や確実性を重視する人におすすめ
学資保険がおすすめなのは、学資保険ならではの保障や確実性を重視する人です。例えば、死亡保険などにあまり入っておらず学資保険の死亡保障を必要とする人、絶対にお金を減らしたくない人などはNISAを使った学資積み立てに向いていない可能性があります。
ただし、死亡保障については、学資保険でなくても収入保障保険(生活費の支え)や定期保険(教育費の支え)を活用して準備した方が効率的な場合もあります。
保険料の負担など家計の状況を踏まえた上で、さまざまな選択肢と比較して検討するのがおすすめです。
「保険についてよく分からない」「保険を見直したいけど誰に相談すれば良いか分からない」そのようなお悩みがある方は、電話でプロに相談してみませんか?
一定以上のリスク許容度がある人にはNISAがおすすめ
資産運用に伴うリスクを許容できる人であれば、NISAの活用がおすすめです。
前述の通り、NISAはお金が減る可能性もある代わりに、大きく増やせる可能性もある点が特徴です。資金的に余裕があり、一時的に資産が増減することを許容できる人や、元々資産運用に関する知識や経験がある人(もしくは資産運用についてこれから学んでいきたいと考えている人)は、特にNISAに向いているでしょう。
また、物価上昇に備えたい場合や学資保険の利回りでは満足できない場合にもNISAが有効です。NISAで子どもが大学に進学するまでの期間、積立投資をすればバランス型などローリスク・ローリターンといわれる投資信託を選んだとしても、学資保険以上に増やせる可能性は十分にあります。
現在販売されている学資保険は利回りがほとんど期待できないため、預貯金とあまり変わりがありません。また、親が亡くなった場合の教育費が心配な場合は、掛け捨ての死亡保険を活用すれば、より効率的に死亡保障を準備することができます。
教育資金の準備に関するよくある質問

NISAや学資保険に関するよくある質問として、以下のようなものが挙げられます。
・教育資金は総額いくら必要ですか?
・学資保険とNISAは併用できますか?
・学資保険とNISA以外で、教育資金を準備する方法にはどのような方法がありますか?
それぞれ回答します。
教育資金は総額いくら必要ですか?
教育資金は、教育方針や進路によっても異なりますが、目安は以下の通りです。

幼稚園から大学まで全て公立だと約800万円、全て私立だと約2,200万円が平均的な水準です。なお、幼稚園から高校まで公立、大学だけ私立の場合は約1,000万円です。
一般的には大学進学時に最もお金がかかるといわれています。「大学進学までに教育資金として400万円貯める」など時期と金額の目標を定め、今からいくらずつ貯めていけば間に合うのか逆算して、計画的に貯めていくのがおすすめです。
学資保険とNISAは併用できますか?
学資保険とNISAは併用可能です。どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。
併用する場合は、死亡保障が必要な部分や最低限必要な教育費部分は学資保険で用意して、プラスアルファの部分はNISAを活用するなど、双方の長所を生かせるよう使い分けるのがおすすめです。
学資保険とNISA以外で、教育資金を準備する方法にはどのような方法がありますか?
教育資金を準備する方法はいくつもあります。学資保険とNISAだけでなく、預貯金や終身保険なども選択肢の1つです。
預貯金や終身保険は、お金が減りにくく確実性が高い方法です。ただ、その一方でお金が増えにくく、教育費の上昇に負ける可能性がある点に注意が必要です。
「終身保険や養老保険を使って保障も貯蓄も兼ねる」という人もいますが、基本的には、貯蓄と保障は分けて考えるのがおすすめです。そうすることで、双方にかかるコストを抑えやすく、効率良く準備できるからです。
NISAを活用して教育資金を準備しよう

NISAは、教育資金を準備する方法として活用できます。価格変動リスクはあるものの、物価上昇に強く、お金を大きく増やせる可能性がある点がメリットです。
正しい知識を身に付けた上で、自分に合った方法を見つけましょう。
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