2022年4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられ、若年層の契約トラブルが懸念されています。また、70歳以上の高齢者層の契約トラブルに関する相談件数も多い傾向があります。
悪質業者はさまざまな手口で私たちに近づいてくるため、「自分は大丈夫」と思っていても実際にトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。契約トラブルに遭わないためには、どのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。
本記事では、契約トラブルの実態や契約トラブルに遭わない注意点について解説します。
目次
- 契約トラブルの相談件数は増加傾向にある
- よくある契約トラブルの事例とは?
- 商品やサービスの契約をする時はどんなことに気を付けるべき?
- 契約トラブルに遭わないためには?
- 契約トラブルで困った時はどこに相談すればいい?
- 意に沿わない契約をしてしまったら早めに専門機関に相談しよう!
契約トラブルの相談件数は増加傾向にある
独立行政法人 国民生活センター「2022年度 全国の消費生活相談の状況」によると、2022年度の消費生活相談の総件数は89万5,606件で、前年度よりも約5万件増加しました。
また、契約トラブルは、成人になってすぐの時期に増加する傾向が見られます。そのため、2022年4月の成人年齢引き下げにともない、18歳、19歳における消費者トラブルの増加も不安視されています。
契約当事者を年代別に見ると、70代が最も多く全体の23%。商品・サービス別では商品一般、化粧品、賃貸アパート・マンション、健康食品などが多くなっています。
【年代別(契約当事者)における相談者の内訳(2022年度)】
(単位:件)

※出典:独立行政法人国民生活センター「2022年度 全国の消費生活相談の状況」より当社にて作成(2024年6月1日)
若年層に限ってみれば、インターネットゲーム、出会い系サイト・アプリ、脱毛系などの商品・サービスに関する相談が多い傾向があります。
よくある契約トラブルの事例とは?
よくある契約トラブルの事例として、サイドビジネス商法、情報商材、クレ・サラ強要商法、マルチ取引が挙げられます。各契約トラブルについて詳しく見ていきましょう。
「誰でも簡単に稼げる」は要注意!サイドビジネス商法による契約トラブル
サイドビジネス商法とは、副業や内職、投資用ソフトやビジネススクールといった儲け話を持ち掛け、商品やサービスを勧誘する手法のことです。2014年以降、相談件数が毎年増え続けています。2015年には相談件数が1万件を超え、さらに2021年には1万5,000件を超えました。相談件数は今後も増えていくことが予想されます。

※出典:国民生活センター「消費生活センターにおける解決困難事例の研究 調査報告書」より当社にて作成(2024年6月1日)
サイドビジネス商法に関する商品や役務などについて見ていくと、「誰でも簡単に稼げる」といったうたい文句でアフィリエイトや転売ビジネスなどに勧誘されたケースが全体の33%を占めます。
具体的には「有料プランに加入しないと儲からないと言われ、加入した後に事業者と連絡がとれなくなった」「マッチングアプリで知り合った女性から高額なビジネススクールに誘われて入会したが、説明と違った」などのケースが見られます。
期待した内容と違う!?情報商材の購入による契約トラブル
情報商材とは、投資や副業で高額収入を得るためのノウハウなどと称して販売されている情報のことです。主にインターネットや通信販売などを通じて販売されています。
情報商材は、USBやDVDなど中身を見るまで内容がわからない商品であることが多く、トラブルになりやすい傾向があります。
また、商品を購入したものの、「広告や説明された内容と異なるため解約したい」といった相談も国民生活センターに寄せられているため、注意が必要です。
お金がなくても無理やり契約させるクレ・サラ強要商法による契約トラブル
クレ・サラ強要商法とは、「お金がない」と断っても、「利益ですぐに取り返せる」などと言って借金やクレジットカード払いを促し、強引に高額な情報商材などの契約を締結させる手法です。
その他クレ・サラ強要商法は、投資用教材の購入、美容エステの契約などを契約させるための手口として利用されることが多く、若年層の被害額の高額化につながる要因となっています。
知人から持ち掛けられた話には注意!マルチ取引による契約トラブル
マルチ商法・連鎖販売取引とも言われます。商品やサービスを契約した後に、購入者が次の購入者を探し、連鎖的に販売組織を拡大させていく手法です。
購入者が増えるほど手数料が入る仕組みになっており、主に健康器具や化粧品、学習教材の販売に利用されています。
知人や友人、マッチングアプリを通じて知り合った人から勧誘されるため、断って関係を悪化させたくないという心理が働き、契約してしまうケースがあります。
商品やサービスの契約をする時はどんなことに気を付けるべき?

商品やサービスの契約をする前に、そもそも契約とは何かを理解することが大切です。また、万一、契約をしてしまった時のために、クーリング・オフについて知っておきましょう。
まずは契約の意味を知ろう
契約とは法的な効力が生じる約束のことで、申し込みと承諾、双方の意思表示によって成立します。
一般的に契約をする時は契約書を交わすことがありますが、例えば売買契約の場合、売り手の「売りましょう」と買い手の「買いましょう」という合意があれば、口約束でも成立します。
一旦契約をすれば、契約の当事者はそれぞれ権利と義務を果たさなければなりません。
例えば、売る側は「代金を受け取る権利」「商品やサービスを引き渡す義務」、買う側は「商品やサービスを受け取る権利」「代金を支払う義務」が生じます。
仮に権利と義務を実行しない場合、損害賠償などの責任が発生する可能性があります。
また、契約は当事者の自由意志に基づいて結ぶことができますが、正当な理由がない限り、どちらかが一方的に破棄できるわけではありません。
クーリング・オフが対象な取引・期間を確認しよう
クーリング・オフとは、契約後、一定期間内であれば、一方的かつ無条件に契約の解除や申し込みの撤回ができる制度です。
クーリング・オフは消費者保護の観点から、一旦契約の申し込みや締結をしたあとに、冷静に考える時間を与えるために設けられています。
特定商取引法は、クーリング・オフができる取引と期間を定めています。

なお、店頭販売や通信販売、インターネット通販は、クーリング・オフ対象外となっています。
契約トラブルに遭わないためには?
契約トラブルに遭わないためには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。契約トラブルを回避するための方法を3つ紹介します。
契約をする前にしっかり検討する
商品の購入や、サービスを契約する場合、以下の内容に注意して下さい。
1.契約を急かせる言葉には要注意
「今だけの特別価格」「タイムセール」「残りわずか」など、契約を急かすような告知に安易に応じないようにしましょう。
2. 本当に必要か検討する
広告やキャッチコピーをうのみにせず、購入前に本当に必要か慎重に検討しましょう。
3. 契約内容や代金を確認する
契約を結ぶ時は即決せず、契約内容や代金を必ず確認しましょう。不安な時は一度持ち帰って、周囲の人や専門家に相談してみることをおすすめします。また、信用できる取引先か、事業所名や住所、電話番号なども事前に調べておくことも大切です。
4. 悪質業者は断りにくい環境をつくることがある
悪質業者はSNSで知り合った人や、友達からの紹介、訪問販売、電話勧誘など、あらゆる場面で断りにくい環境を、意図的につくり上げている場合があります。怪しいと感じたら、すぐにその場を離れる、電話を切るなどの措置を講じましょう。
契約したくない時ははっきり断る
しつこい勧誘を受けたとしても、契約したくない時は、勇気を出してハッキリと断ることが大切です。
「お金がない」という理由で断ると、借金やクレジットカード払いを勧めてくる事業者もいますが、そのような事業者はそもそも信用してはいけません。
また、その場から逃れたい場合、一旦契約をしてクーリング・オフをすれば良いと考える人もいるでしょう。
しかし、商談場所を自分で自宅や勤務先に指定した場合や、店舗に訪問した場合、電話やインターネットで申し込んだ場合はクーリング・オフができないため注意が必要です。
契約内容をよく確認する
契約トラブルを防止するために、契約書に不利な条件が記載されていないか、あいまいな契約内容がないかを細かく確認し、納得してから契約をしましょう。
また、契約書控えをもらい、必ず保管しておくことが大切です。
消費者契約法により、事業者による不当な勧誘で消費者が誤認・困惑して契約を締結した場合、取り消しが可能な場合があります。
仮に意に沿わない契約をしてしまった時は、自分だけで対処しようとせず、早めに専門家に相談しましょう。
契約トラブルで困った時はどこに相談すればいい?
どんなに注意をしていても、悪質業者の手口も巧妙化しているため、契約トラブルに巻き込まれることがあるかもしれません。
以下、契約トラブルで困った時の相談先を3つ紹介します。
消費者ホットライン「188」(消費者庁)
契約や悪質商法のトラブル、製品やサービスによる事故で、どこに連絡すればわからない時に、全国の消費生活相談窓口を紹介してもらえます。メールでの相談を受け付けている自治体もあります。
金融サービス利用者相談室(金融庁)
預金や融資、保険、投資、暗号資産(仮想通貨)など金融機関と消費者間のトラブルに関する相談を受け付け、アドバイスや他機関の紹介を行う機関です。
電気通信消費者相談センター(総務省)
電話やインターネット、ケーブルテレビといった電気通信を利用して提供されるサービスの契約や利用に関する電話相談を受け付けるサービスです。該当する電気通信業者への連絡や、論点整理などのアドバイスを行います。
意に沿わない契約をしてしまったら早めに専門機関に相談しよう!

2022年度に国民生活センターに寄せられた契約トラブルによる相談件数は、年間89万5,606件に上ります。
手口も巧妙化しており、自分だけは大丈夫という過信も禁物です。商品やサービスの契約は、契約内容を理解し、納得した上で手続きをするよう心がけましょう。
契約したくない時は、はっきりと断ることが大切です。万一、意に沿わない契約をしてしまったり、契約トラブルに巻き込まれたりした時は、速やかに専門家に相談しましょう。