「将来もしものことが起こったら……」となんとなく不安に感じ、保険を検討している人は多いでしょう。
事実、保険は自分や家族の生活を守るために役立つものです。しかし、加入すればするほど保険料の負担が重くなり、家計を圧迫してしまいます。
この記事では、自分に合った保険に無駄なく適切な分だけ入るにはどうすれば良いのか解説します。
目次
- 「保険は必要」だからこそ、知っておきたい4つの原則
- まずは「本当に保険は必要か?」を考える
- 効率的に保険で備えるために、押さえておくべき優先順位を理解する
- 保険と資産運用はバランスが大切
- まとめ
「保険は必要」だからこそ、知っておきたい4つの原則

安心した生活を送るために保険は必要です。しかし、保険は「入りすぎ」も「入らなさすぎ」も良くありません。保険に入って十分な安心を得るためには、保険についてよく理解した上で加入することが大切です。必要な分だけ保険を活用するために、必ず理解しておきたい4つの原則を紹介します。
【原則1】人によって必要な保障は異なる
「保険に入るべきかどうか」「どんな保険にどれくらい入るべきか」は人によって違います。
なぜなら、必要な保障額(保険で備えておくべき金額)は、その人の年齢や家族構成、家計や貯蓄の状況、現在の生活レベル、人生プラン、マイホームを持っているか、車を運転するか……などさまざまな条件によって変わってくるからです。
「周りの人が入っているから」「おすすめされたからなんとなく」といった理由で保険に入るのは、無駄を生む原因になります。あくまで「自分にあっているか」を基準に考えましょう。
【原則2】ライフステージによっても必要な保障額は変化する
必要な保障額は、ライフステージによっても変化します。たとえば、同じ人でも小さな子どもがいる30代のころと、子どもが巣立った60代のころとでは、もしものときに必要になる金額がまったく異なります。
「一度保険に入ったらずっとそのまま」という人も多いですが、適切にリスクに備えるためには、定期的な見直しが必須です。
【原則3】リスクに備える方法は保険だけではない
「リスクに備える=保険に入る」と考えがちですが、保険以外にもさまざまな選択肢があります。保険はあくまで、リスクに備える手段の一つに過ぎません。
すべての不安を保険でカバーしようと考えると、たちまち家計を圧迫してしまうでしょう。本当に必要な保険にのみ入って、効果的に不安を解消するには、保険で備えるところと、貯蓄など保険以外の方法で備えるところを区別することが大切です。
保険で備えるべきかどうかを判断する基準については、後述します。
【原則4】保険と資産運用は分けて考える
将来のお金が不安だから保険で貯蓄するという人もいます。しかし、保険と資産運用は分けて考えた方が効率的です。
保険は「いま」のため、資産運用は「将来」のための備えと考えましょう。保険だけ、資産運用だけなどいずれかの方法に偏るのではなく、家計の状況に合わせてバランスよく準備したいところです。
まずは「本当に保険は必要か?」を考える

過不足なく保険に加入するために、事前に行っておきたいことを3つ紹介します。上述のような考え方をもとに、1つずつ取り組んでみましょう。
自分にとってのリスクを把握する
まずは、人生のおもなリスクにはどのようなものがあるのか、自分や家族にとって何がどれくらいのリスクになるのかを正しく理解することから始めましょう。
人生のさまざまなリスクのイメージ

人生には「死亡」「病気」「ケガ」「介護」「事故」「失業」「休業」「盗難」「離婚」「災害」など多くのリスクがあります。
ここで注意が必要なのは、そのような事態が発生したときに、どれくらいの経済的ダメージが発生するのかは人によって違うということです。
自分の場合、もしものときはいくら必要になりそうか、できるだけ具体的にイメージしてみることが大切です。よくわからないときは、平均的な費用などを調べてみると良いでしょう。
一般的に、養っている家族(特に小さい子ども)がいる人は、もしものときに本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を及ぼすことになるため、経済的なダメージや必要な保障額が大きくなりやすい傾向があります。
公的保険や団信でどの程度リスクをカバーできるのかを確認する
民間の保険にまったく入っていない人でも、保障がゼロというわけではありません。実は、国が運営している公的保険、住宅ローンに付帯している団信(団体信用生命保険)などで、リスクをカバーできている可能性があります。
公的保険は健康保険、老後の年金や遺族年金、障害年金、介護保険、雇用保険や労災保険などさまざまなリスクごとに対応した制度があり、一定の条件を満たした人には加入が義務付けられています。
ただし、職業や働き方によって加入している制度が異なるため、どんなときにどれくらい守られるのかは個人差があります。
自分の場合はどこまでカバーできているのか、すでにある保障の内容や範囲をよく理解しておきましょう。
必要な保障は自分にあった方法で準備する
もしものときにかかる費用から、公的保険や団信でカバーできる分を差し引いてみましょう。もしカバーしきれない部分があれば、その分を何らかの方法で補います。
前述のとおり、不足する保障を準備する方法は保険だけではありません。貯蓄や資産運用など他の方法と比較しながら、最善の方法で備えるようにしましょう。
一見遠回りで面倒に思えるかもしれませんが、「自分にとって本当に保険が必要なのか」「必要ならどれくらい入っておくべきか」を見極めるためには、このようなステップを踏んで1つずつ理解しながら判断していくことが大切です。
一度まとまった時間を確保して、じっくりと調べたり考えたりする機会を設けてみるのもおすすめです。
効率的に保険で備えるために、押さえておくべき優先順位を理解する

保険で備えるべきか、それ以外の方法で備えるべきか……迷ったときは次の2点を基準に考えると良いでしょう。
- 発生する確率
- 経済的な負担
それぞれの大きさをもとに、4つのパターンに分けて解説します。
リスクマップのイメージ

最優先は「低確率・負担大」のリスクへの備え
保険で備えるのに最も向いているのは、発生する確率は低いものの、もし発生した場合には経済的な負担が大きくなるリスクです。
【「低確率・負担大」のリスクの例】
・子育て期に死亡するリスク
・自宅が火災に遭うリスク
・自動車事故を起こすリスク など
①起きる確率がきわめて低い、②いつ起こるか予測がつかない、③起こってしまったら経済的な負担が甚大という3つの条件がそろったら、民間の保険への加入を検討する必要性が高いといえます。
特に、働く世代にとって最大の課題となるのが、遺族への影響が大きい「死亡リスク」です。子どもがいる場合は最優先で検討しましょう。
必要最低限の保険料で効率的に死亡リスクに備えるには、掛け捨ての定期保険(収入保障保険や定期死亡保険など)を活用するのがおすすめです。
「低確率・負担大」のリスクのイメージ

「高確率・負担小」のリスクは予防する
発生する確率が比較的高く、経済的な負担が小さめなリスクとは、たとえば以下のようなものです。
【「確率高・負担小」のリスクの例】
・台風の被害に遭うリスク
・風邪やインフルエンザ、生活習慣病等になるリスク など
上記のようなリスクに保険で備えようとすると、受け取れる金額の割に、保険料が高くなりやすい傾向にあります。上記の例には、生活習慣病など「負担小」ではなさそうなものも含まれていますが、公的保険が充実しているため、実質的な負担が少ないケースも多くあります。
「確率高・負担小」のリスクは、発生しても経済的な負担は小さいので、むやみに保険に入るよりも予防を心がけましょう。
たとえば台風被害に対しては、ハザードマップを事前に確認して特にリスクが高い地域を避ける、台風がよく来る地域の賃貸住宅に住むなら1階以外の部屋を選ぶといった対策ができます。
病気になるリスクを下げるには、適度な運動や健康的な食事、十分な睡眠、手洗い・うがいなどの習慣を継続するのが有効です。
「高確率・負担小」のリスクのイメージ

「低確率・負担小」のリスクは気にしすぎない
発生する確率が低く、経済的な負担が小さいリスクは、貯蓄などで備えておくのが良いでしょう。
【「低確率・負担小」のリスクの例】
・盗難の被害に遭うリスク
・家の鍵やスマホなどを紛失するリスク など
精神的なショックは大きいかもしれませんが、経済的な負担は小さめです。数万円~数十万円程度の出費が突然発生しても対応できるよう、生活予備資金(緊急時に使うための預貯金)を確保しておくとよいでしょう。
発生する確率が低いうえ、ある程度の貯蓄があれば対応できる場合がほとんどなので、気にしすぎないことが大切です。
「低確率・負担小」のリスクのイメージ

保険では「高確率・負担大」のリスクに備えることが難しい
発生する確率が高く、発生時の経済的負担が大きいリスクは、保険で備えることが困難です。
【「高確率・負担大」のリスクの例】
・戦時下で渡航中止の国に出向いて死傷するリスク
・酒気帯び運転や危険運転で事故を起こすリスク など
上記のようなリスクは、一般的な保険では「免責事項」に該当します。つまり、自分から危険に飛び込んでいっているとみなされるため、保険金の対象外になります。
ひとたび発生すれば経済的な負担が甚大になるため、貯蓄で備えることも難しいでしょう。危ない場所に行かない、安全運転を心がけるなど、リスクを回避して自分を守るのが鉄則です。
「高確率・負担大」のリスクのイメージ

保険と資産運用はバランスが大切

保険はリスクに備える手段の一つに過ぎません。貯蓄や資産運用などと組み合わせて、バランスよく備えましょう。
保険は自分や家族の生活を守るために役立ちます。しかし、保険に入るなら「確率低・負担大」のリスクだけにする、公的保険や団信でカバーできる分は除くなど、最低限必要なものだけに絞って加入するのがおすすめです。
本当に必要な保険のみに加入して、保険料を抑えることができれば、浮いた保険料を貯蓄や資産運用に回せるようになります。貯蓄は「確率低・負担小」のリスクの備えとしても使えます。また、資産運用は、将来お金が足りなくなるリスクへの対策として有効です。
限られたお金を適切に配分して、さまざまなリスクに備えましょう。
まとめ
この記事のポイントは以下のとおりです。
- 安心した生活を送るために保険は必要
- リスクに備える方法は保険だけではない
- 保険で備えるべきは、子育て期の死亡など「確率低・負担大」なリスク
- 死亡リスクの備えには、定期保険(収入保障保険・定期死亡保険)を活用する
- 保険と資産運用(貯蓄)は分けて考える
今の自分にあった方法を適切に選択すれば、保険料を抑えながら必要な保障を準備することができます。記事内で触れた考え方や3つのステップをもとに検討してみましょう。