保険は保障内容が手厚くなればなるほど、その分支払う保険料も高くなります。人生のさまざまなリスクに備えつつ、大切なお金を活かすためにも、無駄なく保険に入りたいものです。
しかし、どのくらいの保障内容のプランが今の自分に合っているのか、自信を持って保険を選び、必要最低限の費用で必要十分な保障を確保できる人は少ないのではないでしょうか。
この記事では「死亡」リスクを例に、どのように合理的に計算して保険に加入すれば良いのか、考えるべきポイントを説明します。
目次
- 死亡リスクは保険で備えることを検討する
- 加入している保険は定期的に見直す
- 保険と資産運用はバランスが大切
死亡リスクは保険で備えることを検討する

前の記事において、民間保険の活用を考えるべき3つの条件を紹介しました。①起きる確率がきわめて低い、②いつ起こるか予測がつかない、③起こってしまったら経済的な負担が甚大である、という3つの条件を満たした場合に保険を検討すべきというものです。
具体的なケースとして「死亡」を考えてみましょう。政府の統計によると、下記の図のように、日本人が60歳までに死亡する確率は、男性で6.8%、女性で4.0%です(※)。働く世代が死亡する確率として考えると、1つ目の条件「①起きる確率がきわめて低い」に当てはまります。

また、2番目の条件である「②いつ起こるか予測がつかない」についても、死亡は当てはまります。
最後の条件である、「③起こってしまったら経済的な負担が甚大である」についてはどうでしょうか。仮に40歳で年収500万円のAさんがいたとします。Aさんが60歳まで働いた場合、単純計算で500万円×20年間、1億円稼ぐことになります。もし40歳で亡くなってしまったら、この多額の収入が丸々失われることになります。
Aさんの収入で生活している家族がいるならば、Aさんが亡くなった場合の経済的な負担は甚大であると言えるでしょう。
このように「死亡リスク」は3つの条件を満たすため、生命保険で備えるべきものだということがわかります。死亡リスクに効率良く備えるためには、「収入保障保険」や「定期保険」など掛け捨ての定期保険を活用するのが適しています。
ただし、Aさんが独身であったり、生計を立てるのに十分な収入がある家族がいたりするケースなど、そもそも保険で備える必要性がない人もいるため、全ての人が掛け捨ての定期保険を活用して「死亡リスク」に備える必要があるわけではありません。
加入している保険は定期的に見直す

民間の保険で備える必要があるとわかったら、次はどのくらいの期間、どのくらいの金額を備えるべきかを考えましょう。これらは、家族構成、自身や家族の生活水準や金融資産の額、ライフステージなどによって異なります。
夫婦と子ども1人の家庭の場合、子どもの年齢によって備えておくべき金額が変わります。例えば、子どもが小学校に上がる前であれば、小学校から大学までの教育費や20年程度の生活費を確保する必要があります。既に子が大学生になっているのであれば、学費や生活費として備えるべき期間は短く、額も少なくて済むはずです。
夫婦2人のみの家族でも、配偶者の状況によって必要保障額は異なります。現状は世帯主の収入によって生計を立てている配偶者がいるとしても、万が一、世帯主が亡くなった時に、自ら生活費を稼ぐことができるのであれば、多額の備えは必要ないかもしれません。
ただし、持病や介護などの事情があって働くのが難しいといった状況であれば、一定の備えをしておく必要性があるでしょう。
必要な保障額のイメージ①

さらに、ライフステージによっても変わっていきます。例えば、結婚をきっかけに住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合、多くは団信(団体信用生命保険)に加入することになります。団信付きの住宅ローンは、契約者に死亡や高度障害など万が一のことがあった場合には住宅ローン残高はゼロになるため、住居費として必要な金額は、固定資産税と修繕のための積み立てなど少額ですむはずです。
また、子どもの成長とともに備えるべき教育費は少しずつ減っていくため、子どもが進学するタイミングで保険を見直すと、無駄なく必要な保障が確保できるでしょう。
必要な保障額のイメージ②

必要最低限の金額で無駄なく備えたいという人には、「定期保険」や「収入保障保険」を活用して備えるのがおすすめです。
「定期保険」は、死亡・高度障害の万が一が起こった場合、契約時に設定した保険金額を受け取ることができる保険です。定期保険は解約返戻金のないものが一般的で、解約をするタイミングに縛られないため、必要な時期に必要な分だけ保障を準備することができます。例えば、家を買うまでの数年間のみ一定額の保険に入りたいという場合には、定期保険の活用がおすすめです。
「収入保障保険」とは、契約時に設定した期間中に、万が一が起こった場合、一般的に、それ以降毎月、定額の保険金を年金方式で受け取ることができる保険です。必要保障額が減っていくのと同時に受け取れる保険金の総額も減っていくため、「定期保険」と比較して保険料を抑えることができることがメリットです。例えば、末子の独立する年齢まで保険に入りたいという場合には、収入保障保険がおすすめです。
このように、一人ひとりの状況によって民間の保険で備えるべき内容は変わります。
保険と資産運用はバランスが大切

保険の加入を考える時、「自分に万が一のことがあったら、◯◯万円ぐらいのお金は家族に残してあげたい」など、感情的な理由で保険金額の高い商品を選んでしまう人は少なくありません。
必要な保障額は家族の年齢やライフステージなどに基づいた支出の見通し、働き方や保有する金融資産などに基づいた収入の見通しなど、さまざまな要素をもとに変化しますが、合理的に計算できます。
計算の結果、一定以上の貯蓄がある人であれば、必ずしも自分で民間の保険で備える必要はないことがわかるかもしれません。
あくまでも保険はリスクに備える手段一つにすぎず、過剰に加入すると保険料の負担が家計の圧迫にもつながります。
現在、そして近い将来の自分や家族のためにお金を使うことも考え、家計における保険と資産運用はバランスを考えて配分することが大切です。