通常投資で得た利益には約20%の税金がかかるため、投資効率を高めるためには、税金を無視することはできません。支払う税金を抑えるには、税制優遇を活用するのが近道です。
長期的な資産形成をめざすうえで、NISAや確定拠出年金制度(iDeCoまたは企業型DC)といった税制優遇を上手に活用するためのポイントを以下でお伝えします。
目次
- 自分に合った税制優遇の組み合わせを考える
- 老後への備えにはiDeCoも選択肢
- 早くはじめてできるだけ長く続ける
- 非課税枠にとらわれずに運用しましょう
自分に合った税制優遇の組み合わせを考える

投資で優先的に利用すべきはNISAです。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISAでは一定の金額内であれば、原則非課税になります。つまり、利益をまるごと受け取れるということです。
資産運用の目的が老後への備えであれば、同じく税制優遇が受けられるiDeCoを優先するという考え方もあります。しかし、iDeCoには原則として60歳までお金を引き出せないというデメリットがあります。
一方で、NISAなら、投資の目的に応じて自由に非課税枠を使え、投資した資金をいつでも引き出すことが可能です。この点は、iDeCoに対するNISAの大きなメリットといえるでしょう。

NISAは2024年1月から制度が拡充され、年間360万円、生涯で1,800万円まで非課税で投資できるようになりました。NISAだけで、生涯の資産運用は十分という方も少なくないはずです。
これらを踏まえると、まずはNISAからはじめてみて、余裕があればiDeCoも活用するのがおすすめです。そのうえで、ライフステージが進み、老後に備える優先度が上がったときには、iDeCoをはじめたり、iDeCoの掛金を増額したりすることも検討してみましょう。
老後への備えにはiDeCoも選択肢

先ほど少し触れたように、資産運用の目的が老後への備えであれば、iDeCoも選択肢に加わります。特に自営業者・フリーランスの場合には企業年金がなく、公的年金も会社員の2分の1から3分の1程度にとどまるケースが多いため、できるだけiDeCoを活用することをおすすめします。
iDeCoは、前述のとおり、原則として60歳までお金を引き出せません。いざ必要になってもお金が使えないのは、リスクといえるでしょう。
iDeCoを活用する場合は、仮に収入が減ってお金が必要な場合でも引き出せないことを考慮して、別途預貯金やNISAなどで自由に使えるお金を準備しておくことが重要です。一方で、途中で引き出せないからこそ、しっかりと老後に備えられると考えることもできます。引き出せないことを、むしろ潜在的なメリットと考えることもできるわけです。
NISAは運用益が出た時だけ非課税の恩恵を受けられるのに対し、確定拠出年金は掛け金に対しても税金が軽減されるというメリットがあります。ただし、年金や退職金として受け取る際には税金がかかる点に注意が必要です。
iDeCoの対象商品には投資信託だけでなく、預金もあります。投資をして資金が増減するリスクは許容できないけれど、支払う税金は少なくしたいという方は、預貯金で運用するという選択肢もあるでしょう。ただし、長期ではインフレの影響で資産が目減りしてしまう可能性があることを頭に入れておく必要があります。
確定拠出年金は制度がとても細かく、難しい、わかりにくいと感じるかもしれません。しかし、制度を活用するにあたっては全てを理解する必要はなく、大まかに把握しながら、まずは無理のない範囲で活用してみましょう。
早くはじめてできるだけ長く続ける

以下では、元本1,800万円を積立投資した場合、投資期間の違いによって、毎月の投資額や運用成果がどれほど変わるのかシミュレーションしました。下記の図を見ると、早くはじめて長く運用するほど、月々の積立金額が小さく、また大きなリターンを期待できることがわかるでしょう。
元本1,800万円を60歳まで積立投資した場合のシミュレーション
- 20歳から40年間、毎月3万7,500円を投資した場合
- 30歳から30年間、毎月5万円を投資した場合

- 40歳から20年間、毎月7万5,000円を投資した場合
- 50歳から10年間、毎月15万円を投資した場合

非課税枠にとらわれずに運用しましょう

今回は投資で活用できる税制優遇について紹介しましたが、最後に意識していただきたいことを1つお伝えします。それは、制度の活用を前提として投資を考えるのではなく、自分に合った投資を選ぶことが大切だということです。
たとえば、税制優遇の恩恵をできるだけ早く大きく得たいと、自分に合わないペースで投資金額を増やしたらどうなるでしょうか。
投資の経験があまりない方の場合、資金を一気に投資してしまうと、投資で経験する日々の価格変動リスクの大きさに耐えきれず、結果的に投資を続けられない可能性もあります。また、早く投資をはじめようと投資に使える生活予備資金を使って投資をすることは避けなければいけません。
このように、制度をうまく使うことを優先してしまうと、自分にあった投資とは違う行動をとってしまうことがあります。税制優遇は投資のリターンを高めるための手段ですので、制度を使うことは目的ではありません。
ぜひ、ご自分にふさわしい投資を心掛けながら、税制優遇を活用してください。