損害保険は、突発的な事故や災害の際の経済的なリスクに備えるための保険です。加入や見直しを検討するなら、どんなときにどれくらい役立つ保険なのか正しく知っておきましょう。
この記事では、代表的な損害保険である火災保険、地震保険、自動車保険のそれぞれの補償内容や必要性について解説します。損害保険を選ぶときのポイントも紹介しますので、参考にしてください。
目次
- 損害保険とは?
- 損害保険の種類とは?
- 損害保険の選び方と金額の決め方は?
- 損害保険は交通事故・火災・地震等のリスクに備える保険
損害保険とは?
そもそも「損害保険」とはどのような保険を指すのか、整理しておきましょう。
損害保険は、万が一の住宅火災や自然災害、事故、損害賠償リスクなどに備えて加入する保険です。
車にかける自動車保険、家にかける火災保険などが代表的で、基本的に「物に対してかける保険」です。ただし、医療や介護に備えるために損害保険も一部存在します。

損害保険にはさまざまな種類がありますが、万が一のことが起きて損害が出たときに、その損害分を補償するしくみになっているのが一般的です。
生命保険のように「○○したら○○円」と契約時に決めた金額を受け取るのではなく、あくまで実損払い(実際の損害額が保険金として支払われること)が中心なのが特徴です。
損害保険の種類とは?

損害保険には、車や家を守る保険だけでなく、個人賠償責任保険や旅行保険、ペット保険なども含まれます。

ここでは「火災保険」「地震保険」「自動車保険」の3種類について、詳しく見ていきましょう。
住宅火災や自然災害に備える『火災保険』
火災保険は、住宅が火災などに巻き込まれた場合のリスクに備える保険です。「火災」とありますが、火事だけではなく台風や落雷などの自然災害の際にも使えます。
もし火災や自然災害で住宅に被害が出た場合、経済的な損失は非常に大きくなります。修理や引っ越し、場合によっては自宅の再建などが必要になるため、個人の貯蓄などではまかないきれない可能性が高いでしょう。
そのため、火災保険に加入しておく必要性は高いといえます。そもそも火災保険なしでは住宅ローンが利用できない、賃貸契約ができないというケースが一般的です。
火災保険にもさまざまなものがありますが、大きく分けると「住宅火災保険」と「住宅総合保険」の2種類です。
火災・落雷・破裂・爆発等の被害に備える『住宅火災保険 』
住宅火災保険とは、火災保険の中でも特にベーシックな補償内容だけを備えた、シンプルな保険です。 おもな補償対象は以下のとおりです。
- 火災
- 落雷
- 爆発/破裂
- 風災・ひょう災・雪災
必要最低限の補償だけに限定されているため、保険料を抑えやすいという特徴があります。ただ、「これだけだとちょっと心もとない」と感じる人もいるかもしれません。さらに充実した補償を求める場合は、もう1種類の火災保険に目を向けてみましょう。
住宅や家財の被害に幅広く備える『住宅総合保険』
住宅総合保険は、前述の住宅火災保険よりも幅広く補償するのが特徴です。おもな補償内容は以下のとおりです。
- 火災
- 落雷
- 爆発/破裂
- 風災・ひょう災・雪災
- 水災
- 物体の飛来/落下/衝突
- 水漏れ
- 騒じょう等による暴行/破壊
- 盗難
住宅総合保険は、住宅火災保険の内容に加えて、水災、水漏れ、盗難などより多くのリスクに備えられます。ただしその分、保険料は高くなりやすいです。
保険会社によっては、特約を付けてさらに補償を充実させたり、不要な補償だけ外して保険料を抑えたり、柔軟に調整しやすいしくみになっていることもあります。
家の立地状況や想定されるリスク、補償内容と保険料のバランスなどを見つつ、自分にぴったりな保険を選びましょう。
賃貸住宅に住む人向けの火災保険も
火災保険は、持ち家か賃貸かでも選び方が変わります。
持ち家の場合、保険をかける対象は建物や家財(家具や家電など)です。しかし、賃貸の場合、建物は大家さん(家を貸す側)の所有物です。
建物の火災保険はすでに大家さんが契約しているため、借りる側は「自分の家財+大家さんへの賠償責任」を補償する火災保険に加入するのが一般的です。
賃貸契約の際に不動産会社の指定する火災保険に加入する人が多いですが、自分で加入先を探して別の火災保険を選ぶこともできます。
地震の被害に特化して備える『地震保険』
地震保険は、地震・噴火・津波の被害に遭った場合のリスクに備える保険です。
地震や地震による火災などの被害は、火災保険ではカバーできません。地震保険は、火災保険にプラスして補償を充実させるしくみです。そのため、単体では契約できず、必ず火災保険とセットで加入する必要があります。
地震保険の契約金額(もしものときに受け取れる金額の上限)は、火災保険の契約金額の30~50%の範囲内(限度額:建物5,000万円、家財1,000万円)で設定することになっています。
地震保険は国と損害保険会社が共同で運営しているため、どの保険会社で加入しても保険料が同じです。保険料は建物の構造や所在地などによって決まります。
地震保険料を支払った年は、年末調整の際に申告することで「地震保険料控除」を利用できます。税金の負担を軽減できるため、忘れずに申告しましょう。
交通事故に備える『自動車保険』
自動車保険とは、車に関する経済的なリスクに備えるための保険です。おもに交通事故の被害者または加害者になってしまったときに役立ちます。
自動車を運転する場合、加入する義務があるのが「自賠責保険」です。それに追加する形で任意で加入するのが「自動車保険(任意保険)」です。自動車保険(任意保険)に、自分の車が損害を受けたときの補償を付けるために加入するのが「車両保険」です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
『自賠責保険』は人に対する補償のみ
自賠責保険は、交通事故の被害に遭った人を守るための公的な保険で、自動車やバイクを運転するときは必ず加入します。保険料や補償内容は、どこの保険会社で加入しても同じです。
自賠責保険では、他人の身体を傷付けてしまった場合の損害賠償を補償します。補償内容は以下のとおりです。
- ケガ:120万円
- 死亡:3,000万円
- 後遺障害:障害の等級に応じて75~4,000万円
自賠責保険は、事故相手を困らせないための最低限の補償です。他人の物を壊したときの補償や、自分が交通事故で負傷した場合の補償、自分の車が損傷した場合の補償などは付いていません。
自賠責保険の不足を補うため『任意保険』に加入する
自賠責保険で不足する補償を補うために加入するのが自動車保険(任意保険)です。
任意保険は保険会社や契約プランなどによって補償内容が異なりますが、おもな補償は以下のとおりです。
種類 | 補償内容 |
---|---|
対人賠償 | 他人をケガさせたり死亡させたりしたときの損害賠償を補償 |
対物賠償 | 他人の所有物に被害を与えたときの損害賠償を補償 |
人身傷害補償 | 自分や同乗者がケガしたり死亡したりしたときの補償 |
車両補償 | 自分の車が損傷したときの補償 |
前述のとおり、自賠責保険のみでは補償が充分とはいえません。特に対人賠償や対物賠償は、万が一のときの賠償額が億単位になることもあるため、任意保険でも備えておく必要性が高いです。
損害保険料率算出機構の「自動車保険の概要2022年(2021年度統計)」によれば、2021年度の対人賠償の死亡認定額(治療費や慰謝料等の合計額)は、約4割の事案で4,000万円を超えていました。全体の2.8%ですが、1億円を超えた事案もあります。

対物賠償でも、たとえば道路や橋を激しく損傷するような大事故や、営業中のパチンコ店や電車などに突っ込んでしまったようなケースでは、賠償額が高額になりやすいため注意が必要です。
車両の修理費用などは『車両保険』で備える
車両保険に加入していれば、衝突や接触などの事故で「自分の車」に損害があったときに保険金を受け取れます。もしものときの修理費や買い換え費用をまかないたいときに役立つでしょう。
車両保険で保障される事故は、たとえば以下のとおりです。
- 車同士の衝突や接触
- 盗難
- 火災/爆発
- 台風/洪水
- 落書きやいたずら など
保険会社や契約プランによって補償内容が異なるため、よく確認して加入しましょう。車両保険に加入していない場合、事故の加害者からの補償を受けられる場合を除き、自分の車に対する補償はありません。
損害保険料算出機構が公表した統計によれば、任意保険に加入している人のうち約6割の人が「車両保険あり」を選択しています。なかでも自家用普通乗用車では約75%、自家用小型乗用車では約66%と高くなっています。
車両保険をつけると補償が広がって安心ですが、その分、保険料が大幅に高くなるというデメリットがあります。安い中古車に乗る場合や、再購入できる程度の資金がある場合などは不要かもしれません。
原則として、車両保険を使うとノンフリート等級に影響を及ぼし、保険料が高くなります。そのため、車両保険をつけている場合でも、使わない方がお得なケースがあります。
また、少額の修理費用は自己負担すると割り切り、免責金額を設定すると保険料が安くなります。
損害保険の選び方と金額の決め方は?

前述のとおり、損害保険やその補償内容にはさまざまな種類があるため、どうやって選べばいいのか迷ってしまうかもしれません。
最後に、損害保険の選び方と契約金額(保険金額)の決め方について、ポイントを解説します。
補償内容で保険を選ぶ
住宅ローンを組むなら火災保険、自動車を運転するなら自動車保険への加入はほぼ必須と言えます。もしものときの損害が数千万円~億単位にのぼり、家計に与えるダメージが大きくなる可能性があるからです。
また、損害保険は、同じ補償内容であれば保険会社間で保険料に大きな差が出にくい傾向があります。補償を充実させるほど保険料が高くなるため、必要と考える補償と保険料のバランスを見ながら、納得できるものを選ぶとよいでしょう。
現時点ですでに加入している損害保険があるなら、まずはその内容をチェックして、どんなときにいくら受け取れるのか把握するところから始めてみましょう。
損失額ではなく不足額を目安に金額を決める
お金を失うリスクすべてに保険をかけていたら、保険料の負担が莫大になってしまいます。かといって入らなさすぎると、もしものときに困ります。
どれくらい保険に入っておけばいいのか迷ったときは、損失額ではなく不足額を目安に、補償の有無や契約金額(保険金額)を決めるとよいでしょう。生命保険同様、以下の式にあてはめて考えるのが有効です。
保険で用意すべき金額 = もしものときにかかる費用 -(社会保険等でカバーされる金額 + 貯蓄でカバーする金額)
自力でカバーできないほど大きな出費が予想される場合だけ、補償を追加して不足分を補うというイメージです。
損害保険は交通事故・火災・地震等のリスクに備える保険
損害保険には、交通事故などに備えるための「自動車保険」、住宅の火災などに備えるための「火災保険」、地震・噴火・津波に備えるための「地震保険」などの種類があります。
マイホームを購入する人や車を運転する人などにとって、損害保険は必要不可欠です。家や車を失った場合や、他人や他人の物を傷付けた場合、経済的な損失がかなり大きくなる可能性があります。たとえ発生する頻度が低くても、保険に加入してカバーしておくべきでしょう。
どれくらい補償をつけるか迷ったときは、想定される損失額を、自分の貯蓄の範囲内でまかなえそうか考慮して検討しましょう。