金融商品には、預貯金や株式の他、債券や投資信託、保険などさまざまな種類があります。
運用するに当たり、その中から自分にあった金融商品を選ぶためには、それぞれの金融商品の特徴を理解しておくことが大切です。理解しないまま金融商品を選んでしまうと、思わぬ損失を生んでしまうことにもなりかねません。
本記事では、金融商品の種類や特徴、さらにリスクやリターンの関係などについて解説します。
これから資産運用を始めるに当たり、知っておくべき知識として、ぜひ参考にして下さい。
目次
- 金融資産とは?金融資産の運用はお金に働いてもらうこと
- 金融商品の性質を知ろう
- 金融商品を選ぶ時はリスクとリターンの関係を見ることが重要
- お金を貸して一定の利子を得る「債券」の仕組み
- さまざまな金融商品に投資できる「投資信託」
- 金融機関が破綻したらどうなる?私たちの資産を守る「セーフティーネット」
- 金融商品の特徴を知った上で投資を始めよう
金融資産とは?金融資産の運用はお金に働いてもらうこと
金融資産とは、預貯金や株式、債券、投資信託、保険などを指し、金融資産の運用とは、資産形成を目的としてお金に働いてもらうことをいいます。さらに、預金や投資したお金は経済活動に使われ、経済が発展することで最終的に私たちの生活がより豊かで便利になる仕組みです。
預貯金は貯蓄を目的とした金融資産
預貯金とは、普通預金や普通貯金、定期預金や定期貯金に代表される、元本保証のある金融商品のことです。元本が保証されているという特徴から、預け入れたお金が目減りすることがなく、確実にお金を貯められます。
ただ、現在の低金利下では適用される金利が低いため、大きく増えることはほぼありません。しかし、物価は上昇しているため、物価が上昇したぶん預貯金の価値は目減りしている点に注意しておく必要があります。
預貯金は基本的に自由に引き出せるため、普段の生活費や、今後予定されている支出に利用する目的で貯めておく使い方が適しています。
また、預貯金には普通預金や定期預金だけでなく、積立定期預金などがあり、目的にあわせて使い分けることができます。
株式や債券は資産を増やすことを目的とした金融資産
株式や債券、投資信託は、元本が保証されておらず、資産を増やすことを目的とした金融資産です。運用によって資産が大きく増える可能性があるものの、価格が日々変動するため、将来の予測が難しいといった特徴があります。
また、株式や債券などを引き出すためには、売却して現金に換える必要があり、引き出すタイミングによっては損失が発生する可能性もあります。
ただ、このような金融資産の中でも、比較的安定した値動きをするものもあれば、日々の値動きの幅が大きいものもあります。値動きの特徴が異なる金融資産を組み合わせることによって、値動きの幅を少なくできるというメリットもあります。
金融商品の性質を知ろう

金融商品の主な性質として、以下の3つが挙げられます。
- 安全性
- 収益性
- 流動性
それぞれ、どのような基準なのかについて以下で詳しく解説します。自分に合う金融商品を選ぶ上でも重要な基準ですので、しっかり理解しておきましょう。
安全性: 元本が減る可能性はある?
安全性とは、元本やその利息を将来必ず受け取れるかといった基準で、分かりやすくいえば、「預けたお金が減る可能性があるのか」を示すものです。
預貯金は元本の保証があるため安全性が高い金融商品といえるでしょう。
収益性:どのくらいの利益が見込める?
収益性とは、その金融商品で運用した際にどのくらいの利益が見込めるかを重視した基準です。運用する以上、できるだけ資産を増やしたいと考えるでしょう。ただ、運用にあたっては、収益性だけでなく、その商品が持つ安全性についても考慮する必要があります。
流動性:必要な時にすぐに引き出せる?
流動性とは、必要な時にすぐに現金に換えられるかどうかに着目した基準です。普通預金はいつでも引き出せるため、流動性の高い商品に位置付けられます。
金融商品の中には、解約に時間がかかるものがあります。また、引き出すタイミングで価格が下落がしていて、損失が発生してしまうという可能性もあります。
また、換金するにあたって売却する必要がある商品は、買い手が見つからなければ取引が成立せず、換金に時間がかかる点にも注意しておかなければなりません。
以下に金融商品ごとの安全性、収益性、流動性について表にまとめましたので、参考にして下さい。
金融商品 | 安全性 | 収益性 | 流動性 |
---|---|---|---|
預貯金 | ◎ | △ | ◎ |
株式 | △ | ◎ | ○ |
債券 | ○ | ○ | △ |
投資信託 | △~○ | ○~◎ | ○ |
安全性、収益性、流動性の全てを満たす金融商品はありません。そのため、それぞれを上手に組み合わせながら運用していくことが大切です。
金融商品を選ぶ時はリスクとリターンの関係を見ることが重要
金融商品を選ぶ際には、その商品のリスクとリターンの関係に注目することが大切です。ここでは、リスクとリターンの関係について解説します。
リスクとリターンの関係を理解することで、金融商品を上手に組み合わせた運用が可能になります。
金融商品のリスクは「危険」という意味ではない
リスクと聞くと、どうしても「損」や「危険」といった言葉を想像してしまうのではないでしょうか。
しかし、金融や投資の世界でのリスクとは、その金融商品が持つ不確実性を意味します。つまり、収益に変動があり、どのくらいの収益が得られるか分からないということです。
また、リスクとはその金融商品の価格の振れ幅を示す意味で使われることもあります。例えば、株式などは価格変動が大きいため、リスクの大きい金融商品に分類されます。逆に債券などは価格の変動が少なく、リスクの小さい金融商品に該当します。
リスクとリターンは金融商品によって異なる
一般的に一定程度のリスクをとって得られる利回りは年3%~7%くらいが目安といわれています。
また、投資の世界ではリスクとリターンはコインの表裏の関係にあります。したがって、例えば「元本保証で毎年10%以上のリターンが得られる」といったローリスクかつハイリターンの金融商品は存在しません。この原則を押さえておけば、投資詐欺の被害に遭ったり、リターンだけに気を取られて高いリスクを取り過ぎてしまうことを避けられます。
ハイリスク・ハイリターンの金融商品の代表的なものに株式があり、またローリスク・ローリターンの金融商品として預貯金が挙げられます。次いで債券があり、投資信託は株式と債券の間に位置します。

株式会社に出資をして利益を得る「株式」の仕組み
株式とは、株式会社に出資した投資家(株主)に対し、出資した金額に応じて発行される証券のことです。
株式会社は投資家から出資金を集めて、その資金を元に事業を拡大します。そして利益がでれば、出資した割合に応じて投資家(株主)に対し、配当金を出します。
株式には、このように配当金を受けることで得られる利益(インカムゲイン)と、株価が上昇した際に売却することで得られる売却益(キャピタルゲイン)の2つがあります。また、中には保有している株式数に応じた株主優待が用意されているものもあり、株主優待を狙って株を購入する投資家もいます。
国内での株式は一般的に証券取引所で取引されており、原則として100株単位で売買されます。このことを単元株といいます。
お金を貸して一定の利子を得る「債券」の仕組み
債券とは、国や地方公共団体、企業などが投資家から資金を借り入れた際に、発行する借用証書のようなもののことです。
債券には、利息と満期日が記載されており、満期まで保有することで元本と利息が受け取れる仕組みです。また、利息は定期的に支払われる形がとられています。
債券を満期前に売却する中途換金を行うこともできますが、換金額がその時の市場価格に応じた価格になるため、場合によっては元本割れする可能性がある点に注意しておきましょう。
債券は比較的リスクの低い金融商品です。しかし、例えば外国の債券などでは利回りが高いぶん、発行体が破綻するカントリーリスクも相応に高いものもあります。
国が発行している債券は国債と呼ばれており、多くの金融機関で販売されているため、目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
さまざまな金融商品に投資できる「投資信託」

投資信託とは、一つの商品の中で株式や債券、不動産などさまざまな投資先に投資を行い、運用で得た利益を投資家に還元する仕組みの金融商品です。
運用の原則の一つに「分散」がありますが、投資信託では一つの商品で分散が行える点が大きな特徴です。
投資信託は株式や債券を組み合わせた金融商品
投資信託とは、投資家から小口で集めた資金を大きな資金にまとめ、運用会社にいる運用のプロが運用を行うため、運用初心者に向いている金融商品です。運用のプロはファンドマネージャーと呼ばれ、投資信託の目的に応じた複数の投資先に投資を行い運用します。
投資信託には国内の株式に投資する商品の他、全世界の株式に投資するものや、投資先を債券や不動産に限っているものなど種類が豊富に揃っています。投資家は、投資信託を購入することにより、さまざまな投資先に分散投資ができ、その運用成果によっては分配金を受け取れるものもあります。
一般的には株式や債券など投資先が統一されている商品が多いですが、中には一つの商品で株式や債券、不動産などさまざまな投資先に投資を行うバランス型といわれる商品もあります。
複数の投資対象に分散して投資する
投資信託は、複数の投資対象に分散して投資が行えるため、リスクを分散できるというメリットがあります。例えば、国内株式に投資する投資信託でも、複数の株式に投資するため、ある企業の株価が下がったとしても、他の企業の株価が変わらなければ損失を小さくできます。
この原理は投資先が債券であっても不動産であっても同じです。
また、運用や管理を専門家に任せることができるため、個人でも幅広い投資先への投資が可能になります。
投資信託は少額からの投資が可能で、金融機関によっては500円~1,000円程度からの積み立ても可能です。
投資信託の種類によってリスクとリターンが異なる
投資信託の投資対象は、主に株式や債券、不動産などで、さらに投資地域も国内と海外に分けられます。
販売されている投資信託の数も多く、2024年2月末時点の個人投資家が主に投資をすることができる公募投資信託の数は5,924本となっています。
ただ、投資信託を購入する場合は、その投資信託に組み入れられている投資対象によってリスクとリターンが異なります。例えば、株式は一般的にハイリスク・ハイリターンの金融商品ですが、株式と債券を組み合わせた投資信託や株式以外に投資する投資信託を選ぶことで、リスクを抑えられます。
また、リスクとリターンだけでなく、投資信託の運用方針や運用実績の他、手数料などの運用コストも確認した上で選ぶことを心がけましょう。
金融機関が破綻したらどうなる?私たちの資産を守る「セーフティーネット」
セーフティーネットとは、金融機関が経営破綻した場合に預金者や投資家、また保険契約者の資産を保護するための仕組みです。
セーフティーネットは業界の取り決めとして法律で制度化されており、現在制度化されている主なセーフティーネットには、以下のものが挙げられます。
- 預金保険制度:銀行や信用金庫などに預けた預金や信託
- 投資者保護基金:証券会社に預けた資金や有価証券
- 保険契約者保護機構:生命保険、損害保険
制度によって対象となる金融商品や金融機関、保護の限度額が異なり、例えば預金保険制度では一般預金であれば元本1,000万円とその利息が保護されます。決済用の預金であれば全額が保護される仕組みです。
投資者保護基金では一定の取引にかかる資金や有価証券について合計1,000万円までが補償されますし、さらに保険契約者保護機構の場合、生命保険であれば解約返戻金の90%までが補償され、損害保険であれば保険の種類によって80%もしくは100%が補償されます。
金融商品の特徴を知った上で投資を始めよう

金融商品を運用する方法として、預貯金と投資があります。また、金融商品によって、安全性や流動性、収益性が異なる点も理解しておきましょう。
一般的にリスクが大きいほど期待できるリターンも大きくなりますが、逆にリスクが少ないと大きなリターンは期待できません。
金融商品には、主に株式や債券、また、株式や債券の他に不動産などを組み合わせた投資信託がありますので、それぞれのリスクとリターンを理解した上で選ぶことが大切です。