投資にあたって知っておきたい用語を、やさしく解説する「基本のキ」シリーズ。
今回は、「『リターン』って何ですか?(前編)」でご説明した「リターン」について、もう少し詳しくお伝えします。
卵を食べずにニワトリに育てる
投資によって得られたリターンは、時間をかけることによって、その時点で得られた金額以上の力を発揮させることができます。それが「複利」です。
複利とは「リターンがリターンを生む」という効果です。その考え方をご理解いただくために、「ニワトリと卵」のたとえ話をご紹介しましょう。
一羽のニワトリを飼っていたとします。ニワトリは毎年一つずつ卵を産みます。その卵をすぐに食べるか、卵をかえして育てるかで、その後いくつの卵を得られるかが大きく変わってきます。
1卵を食べる
ニワトリは毎年一つずつ卵を産むので、毎年一つの卵を得ることができます。
2ニワトリに育てる
卵からかえったニワトリが卵を産み、その卵からかえったニワトリがまた卵を産みます。時間が経てば経つほど多くの卵を得ることができます。
卵を食べてしまわず、育ててニワトリにすることで、得られる卵の数にどんどん差がつきます。
資産運用でいう「複利」の考え方は、「ニワトリに育てる」ことに近いといえるでしょう。ニワトリを元本、卵をリターンとすれば、卵をかえしてニワトリに育てることで、得られる卵がどんどん多くなります。
卵を食べるか、ニワトリに育てるかで差が出る
単利と複利のイメージ図
それでは話を資産運用に戻しましょう。
たとえば、毎年5%のリターンを得られる投資商品があったとして、100万円を最初の元本として30年間運用する場合を考えます。1年目に5万円のリターンを得たとき、2年目はその5万円も加えた105万円で、さらに1年間運用を続けます。すると2年目のリターンは5万2500円と、1年目よりも2500円多くなります。(※1)
この2500円は、1年目に得たリターンである5万円に対するリターン(5万円×5%)です。つまり、運用当初にはなかった1年目のリターンが、2年目に新たなリターンを生んだということです。これが「複利」の効果です。
時間を味方につける
1年だけではさほど効果を感じられないかもしれませんが、これが20年、30年と積み重なると、「複利」の効果はどんどん大きくなっていきます。
先ほどの例をもとに、得られたプラスのリターンを毎年引き出して手元に置いた場合(単利)と、毎年得られたプラスのリターンを元本に加えて運用を行った場合(複利)を比べてみましょう。
「複利」で30年間運用すると大きな差がつく
複利効果のイメージ図
(注)毎年5%のリターンが確実に得られるという前提で、100万円を30年間運用した場合の例。「単利で運用」は1年ごとに得られた利益を現金化、「複利で運用」は利益を翌年の運用の元手に加えたとして試算。当社作成。
毎年のプラスのリターンを引き出して手元に置いた場合(単利)、30年後の資産は250万円になりました。一方、毎年得られたプラスのリターンを元本に加えて運用を行った場合(複利)には、30年後の資産は432万円になりました。
実際の資産運用では、リターンは一定ではなく毎年異なるため、シミュレーションの通りにはなりません(シミュレーションのようにきれいなカーブを描いて資産が増えるわけでもありません)。ただ、「長期・積立・分散」の資産運用を20年、30年と続けるほど、複利の効果が大きくなっていくことが期待できるのです。
行動経済学でも、人間は将来の利益よりも目先の利益を重視する傾向があるといわれています。WealthNaviをご利用のお客様の一部にも、市況がよくなってプラスのリターンが得られたり、分配金(※2)が入ったりすると、そのリターンを引き出してしまう方もいらっしゃいます。
しかし、リターンをその都度引き出してしまうと、複利効果を生かすことができません。ニワトリと卵の例でいえば、卵が産まれた瞬間に食べてしまっては、その後ニワトリとなりもっとたくさんの卵を産んでくれるチャンスを逃すことになります。
プラスのリターンを得られるとうれしいものですが、リターンを引き出さずに続けるほうが、資産を大きく育てられる可能性が高まります。時間を味方につけ、複利のチカラをうまく利用して、資産運用を続けていきましょう。
- 今回のコラムでは、税金は考慮しておりません
- ETF(上場投資信託)や投資信託の多くは、株式などたくさんの個別銘柄が集まってできています。
そこで生まれた利益(例:株式から得られる配当金など)は、投資家に現金で支払われる仕組みになっています。
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