「コア・サテライト戦略(運用)」は、長期投資でリスクを抑えるコア部分と、短期的により高いリターンを狙うサテライト部分に分けて考えます。中心にすべきは「守り」のコアであり、老後などの将来に備える目的であれば、コアだけでも十分です。
しかし日本では、相対的にリスクが高く、投資の中心にするのは避けた方がいい「攻め」の人気が高いのもまた事実です。以下では、そのような投資の例を見ていきます。
集中投資はリスクが高い
大前提として、投資対象が何であれ、集中投資をコアにすることは、大きく損をする可能性が高まるので好ましくありません。リスクを抑制するために長期的な分散投資を行うコア運用とは、本質的に相容れないものです。
しかしながら、過去から現在に至る資産運用のあり方を踏まえると、日本人は集中投資をしやすい傾向があるのかもしれません。
たとえば、かつては個別株の売買が投資の主流という時代がありました。個別株への投資は対象が1社に集中するため、株価が急落した際の影響が大きくなります。大当たりを狙えるかもしれない半面、大外れの可能性もある取引です。
また、話題のテーマに集中投資をする「テーマ投信」(※1)も、一時期はとても人気がありました。
「テーマ投信」は、「AI(人工知能)」「インバウンド」といった投資テーマへの注目度が高まるとたくさん買われて値上がりしますが、ブームが去ると一気に売られて値下がりする傾向があります。適切なタイミングで売買できるかどうかによって、リターン(マイナスを含む)は大きく左右されます。
人気のFXや仮想通貨はよりハイリスク
最近では、よりリスクが高いFX(外国為替証拠金取引)や仮想通貨(暗号資産)で利益を得ようとする人も多いようです(※2、3)。
たとえば、日本の個人によるFX取引額は2022年に1京2,074兆円と、暦年ベースで過去最高となりました(※4)。欧米では、為替取引はプロのトレーダーが行うものですが、日本では一般の個人にも身近なものとなっています。
FXや仮想通貨は、タイミングよく売り抜けることができれば、短期間で大きなリターンを得られるかもしれません。しかし、プロでもしばしば読みを外すため、一般の個人が常に当て続けることは容易ではないでしょう(※5)。
現物不動産は集中投資になりやすい
このほかにも、サラリーマンなどに人気がある現物不動産への投資(※6)は、借り入れを含めて投資1件あたりの必要金額が大きく、結果的に集中投資になってしまいがちです。
あるいは、投資に慣れている方が個人向け社債に投資するケースもあるでしょうが、対象が1社に集中してしまうため、個別株への投資と同様のリスクがあります。株式に比べると債券のリスクは低いとはいえ、注意が必要です。
個別資産への投資を中心にするのはリスクが高い
気を付けるべき集中投資の例
ここまでを読んで、「資産のほとんどは預貯金であって、投資はほんの一部でやっているだけ。FXや仮想通貨に集中投資をしても、全体ではリスクを抑えられているのではないか」などと思った方がいるかもしれません。
しかし、そのような資産配分は、投資効率の観点からは好ましいとは言えません。そもそも、資産が預貯金に偏っていることは、将来への備えとして有効ではないのです。
必要以上に預貯金を持つことがなぜ問題なのかについては、次回のコラムで詳しく説明します。
- たくさんの投資家から集めたお金を1つにまとめて、専門家がさまざまな株式や債券などに投資をするのが投資信託です。投資信託のうち、特定の投資テーマに基づいて投資対象を決定するタイプがテーマ投信です。テーマ投信は、表面的には運用方針が分かりやすいほか、過去のリターンの実績が良いなどの傾向があります。
- FX(外国為替証拠金取引)は、日本円と米ドルなどの異なる通貨を売買して、為替レートの変動などから利益を狙う取引です。「レバレッジ」という仕組みにより、元手となるお金よりも大きな金額で取引が行えますが、その分だけ損失も大きくなる可能性があります。
- 仮想通貨(暗号資産)とは、ビットコインに代表される、インターネットでやり取りできる新しい資産のことです。日本円や米ドルといった国の「法定通貨」ではなく、需給関係などにより、値動きが大きくなる傾向があります。ただし、値動きを安定させるため、法定通貨などに価格を連動させることをめざすタイプもあります。
- 日本銀行「日銀レビュー 2022年を中心とした最近の個人FX取引」(2023年6月)
- 短期的な価格変動から利益を得ようと資産を売買することは、「投資」というよりも「投機」に当たります。英語では、前者をinvestment、後者をspeculationといい、明確に使い分けられています。
- 不動産投資のうち、実際に物件を取得して行う投資が現物不動産への投資です。マンションの一室やアパート一棟などを購入・所有して貸し出し、賃貸収入を得ます。物件の取得にはまとまったお金が必要になるため、銀行から融資を受けることが一般的です。
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