10年以上かけて大きなリターンを狙う「長期・積立・分散」の資産運用には、いくつかの“やめたくなる場面”が存在します。その一つが、相場が大きく落ち込んだ後、元の水準まで回復したタイミングです。いったん資産を売却して利益を確定したくなるところですが、長期投資を成功させるには冷静な判断が求められます。
長く続けるほどプラスのリターンが期待できる
はじめに、ウェルスナビで資産運用をしているお客様の損益データをご覧ください。運用期間が長くなるほど、リターンがプラスのお客様の割合が高いことが分かると思います。また、長く運用すればするほど、リターンのプラス幅も大きくなっていることが読み取れます。
長く運用するほどプラスのリターンになりやすい
ウェルスナビ利用者の運用期間別の損益状況(2016年1月~2023年3月末までの累計)※1
このような傾向が生じるのは、「長期・積立・分散」の資産運用が、長い目で大きなリターンを狙うものだからです。相場の変動によって一時的にリターンがマイナスになることもありますが、長く続けるほどにリターンはプラスで安定しやすくなります。
上の損益データをもう一度見ると、2023年3月末までの集計では、運用開始から3年経過したお客様のうち90%以上がプラスのリターンを得られています。まさに、長く運用する意義が端的に表れたものと言えるでしょう。
相場が戻ると「やれやれ売り」が発生する
このようなデータがあるものの、現実には資産運用を長く続けられる方ばかりではありません。なかには、10年以上続けるつもりだったのに、数年と持たずにやめてしまう方もいます。
ウェルスナビのお客様データからは、傾向として資産運用をやめやすい時期があることが分かっています。その一つが、相場が一時的に大きく下がった後、元の水準まで回復したタイミングです。
人間の脳は「損をすること」を極端に嫌います。マイナスのリターンが続くと強いストレスにさらされるため、わずかでもプラスのリターンに転じると、安堵感からいったん利益確定の売却に動きやすくなるのです。
下落前の水準まで回復したタイミングで売りたくなる
S&P500の推移(2018年1月1日~2023年3月31日)
資産運用の世界では、このような心情による売却を「やれやれ売り」と呼びます。読んで字のごとく、投資家が「やれやれ」と胸をなでおろす様子を表現したものです。
やれやれ売りで運用期間が短くなる可能性
ウェルスナビは、長期の資産運用ではやれやれ売りをなるべく避けるべきだと考えます。
冒頭にお示しした通り、運用期間の長さとリターンの大きさには正の相関があります。しかしながら、やれやれ売りは長期の運用を妨げる要因として作用するためです。
「やれやれ売りをしても、また運用をやり直せばいいじゃないか」という意見もあるでしょう。ですが、いったん運用をやめてしまうと、中断期間がずるずると長引いてしまう可能性があることは認識しておくべきです。
例えば、相場が再び下がった局面で買い戻そうとしても、うまくいくとは限りません。相場の底を待っていたら、いつの間にか元の水準以上に上昇してしまい、運用を再開する機会を逸してしまった、というのはよくある話です。
また、利益確定後も相場の上昇が続いたとしたら、なかなか再投資に踏み切れないでしょう。売らずに持っていれば得られた利益を取り逃がすことにもなり、非常にもったいないケースと言えます。
重要なのは長期のリターン
長期の資産運用で最も大切にすべきは、目先の小さなリターンではなく、長く続けることによって期待できる将来の大きなリターンです。
今後、やれやれ売りの衝動に駆られる場面が訪れたら、本コラムでお伝えしたことを踏まえ、本当に必要かどうかを冷静に考えてみることをおすすめします。
- 2016年1月末〜2023年3月末までのウェルスナビ利用者の運用実績を運用開始からの期間別に集計したもの(それぞれの期間中に全額出金した顧客は除く)。一時点の相場の動きに依存しないよう、例えば「3年目」には、2016年1月に運用を開始したお客様の2019年1月末時点の損益から、2020年3月に運用を開始したお客様の2023年3月末時点の損益までを含む。各月末時点で預かり有価証券の残高が1万円以上あるお客様が対象で、運用実績から手数料を控除。リターンが0%の場合は「+0%~+5%」に含む。最新のデータはこちらにも掲載。
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